現役を続けながら代表監督を務める「本田圭佑」 川淵三郎氏も絶賛する行動力とは

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ビジネスマンとしての本田を評価

 日本代表は引退するものの現役続行を決意、オーストラリアのチームと契約したばかりの本田圭佑選手が、カンボジア代表の実質的な監督になる。

 現役選手が他国の代表監督になるなんて、果たしてうまくいくのだろうか、と思う人も少なくないだろう。一方で、本田選手のマルチな才能を評価する人は「さすが本田」と感じたのではないか。

 川淵三郎氏も、そうした評価をする一人であることは間違いない。

 川淵氏は言うまでもなく、Jリーグを発足させ、サッカーを日本でメジャーなスポーツに押し上げた「チェアマン」である。チェアマン退任後は日本サッカー協会会長を6年務め、現在も同協会の相談役として日本サッカーに関わっている。最近では、バスケットボール界の内紛にメスを入れ、Bリーグの立ち上げに寄与したことが記憶に新しい。

 その川淵氏が、今回の事態を予見したかのような本田選手への高評価を、新著『黙ってられるか』で語っているのだ。サッカー界の人材について述べ、歴代の監督やキャプテンについて具体的な名前を挙げながら評価しているなかで、本田選手に対しては別格の評価を与えている。(以下、引用はすべて『黙ってられるか』より)。

「人材という意味で期待しているのが本田圭佑だ。何がいいって、言動が一致しているところが素晴らしい。有言実行で、言い訳もしない。選手としてはいま正念場を迎えているが、ビジネスマンとしての才能にも期待している」

 川淵氏は、本田選手がサッカースクールを運営したり、サッカークラブを経営しているだけでなく、国連財団から「グローバル・アドボケイト・フォー・ユース(青少年の国際支援者)」に任命され、世界の子どもの教育支援を行うといった活動についても、やることのスケールが大きいと高く評価している。

当初は動かない選手だった

 自分の役割を考え、積極的に活動している本田選手をベタ褒めしている川淵氏だが、当初、本田選手に対する印象はまったくよくなかったという。

 星稜高校を卒業して名古屋グランパスに入り、3年後の2008年にはオランダチームへの移籍を決めた本田選手だったが、「彼がオランダに行くと聞いたときは、すごく不思議だった。なぜあんなに動かない選手がオランダに行けるのか。もちろん、技術力は抜群だったが、2008年の北京オリンピック予選のときも、こんなに走らない選手をなぜ反町監督は使うのかと思っていたほどだ」

 当初はネガティブな意味で本田選手について興味を持った川淵氏は、ユースや高校時代のことを当時のチーム関係者などに取材。昔から「動かない」選手だったという証言もひきだしている。

「ガンバ大阪のジュニアユースチームにいた頃は、もっと動くようにというコーチの指示を全く聞かない選手だったという。動くことを最小限にし、いかに効率よくサッカーができるかを考えていたようだ」

日本のサッカー界に必要な存在

 そんな本田選手が大きく変わったのは、移籍した先のオランダのチームが2部に降格してからだという。「自分が点をとらないとダメなんだと一念発起して大活躍、1部復帰に貢献し、年間最優秀選手賞(MVP)を受賞した」

 その後はロシアのチームへ渡り、3年後にはイタリアのACミランへ。小学校の卒業文集に書いた「セリエAで10番をつけて活躍する」という夢を実現させた本田選手だが、監督が代わって出場機会が減ると、今度はメキシコへ飛んだ。その決断について川淵氏は、翌年に迫ったワールドカップロシア大会に出場するためには体力や走力を上げる必要があると考え、敢えて酸素濃度の低い標高2400mの高地にあるチームを選んだのだろう、と分析する。

「本田という選手はきっと、いま自分が何をすべきか、そのためにはどうするかを四六時中考えているのだろう」

「選手として活躍し、それなりに収入が得られるようになっても、それで満足するわけではなく、何がサッカーのためになるのか、何が世の中のためになるのかを考えている。それが彼の行動の根底にあるのではないか」

 そして、日本のサッカー界に本田選手のような人物が出てきたのは本当に喜ばしいことだと語り、賛辞を送っている。

「将来、本田が日本サッカー協会の会長になったら面白いだろうなと思う。いや、彼はもっとスケールの大きなことを考えているのかもしれない。

 いずれにしろ、本田が引退後もサッカー界に積極的に関与してくれたら、相当なことができるはずだ。日本サッカー界を大きく飛躍させると期待している」

 確かに現役選手をしながら他国の代表監督を務めるという点をみても、スケールの大きさは相当である。前代未聞となる本田選手の取り組みが成功するか。まずはそこに注目しよう。

デイリー新潮編集部

2018年8月16日掲載

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