他の宗教を渡り歩いた信者が「オウム」を選んだワケ 教団の洗脳技術を読み解く

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これほど不思議な体験を…

――オウム真理教は、このノウハウを理科系大学の出身者から学び取っていったという。マインドコントロールするだけでなく、信者の資産状況を把握し、全財産を布施させるためにも利用していたのだ。

 禅宗や真言密教など、既存の宗教も、ASC到達の技術を持っていますが、禅宗では、修行の早い段階で幻覚を見ることを非常に警戒していました。例えば、若い僧が座禅を組んで、早々に幻覚を見ると、「野狐が取り憑いた」とか「魔境に入った」と言って、中々、悟りを開いたことを認めないのです。つまり、ASCを宗教的に認可するまでに幾つものバリアーを設けて、時間を掛けることで、修行僧の人格の完成を待っているわけです。が、オウム真理教の場台はそういった人格的な問題は考慮されず、ひたすら効率的にASCを再生産した。

 そして、そのために必要なありとあらゆるASC到達の技術も持っていたのです。それこそ伝統的宗教が持っていた技法から、ブレインウォッシングや大脳生理学の研究の成果までが取り入れられていました。ASC到達のノウハウとしては完成されたものと言ってもさしつかえないでしょう。これだけの技術を集中的に施せば、かなりのインパクトがあったはずです。

 幾つかの宗教を渡り歩いた末、オウムに入信したある幹部は、これほど不思議な体験をさせてくれた宗教は他にはなかったと、オウム事件後に話していました。信者は皆、ASCに到達できたのは教祖が超能力を持っている証拠だと勘違いしてしまったわけです。

(3)へつづく

「FOCUS」1999年5月19日号

週刊新潮WEB取材班

2018年8月16日掲載

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