茂木健一郎が説く「幸福脳」の作り方 世界から注目される日本人の〈生きがい〉

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長生きの秘訣!「幸福脳」の作り方――茂木健一郎(1/2)

 自己満足でもいい。好きなことを小さく積み重ねれば、脳は喜びを感じる。それを端的に表した語「生きがい」。ニッポン発のこの語には、健康で長生きするためのヒントが詰まっていた。このたび、自身初となる英語著作の和訳版『IKIGAI―日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣―』を上梓した脳科学者の茂木健一郎氏が説く。

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 今、〈生きがい〉という日本語が、欧米を中心に大きな注目を集めている。ローマ字表記のIKIGAIに姿を変え、世界各国の新聞やラジオ、テレビ、インターネットなどで頻繁に取り上げられているのだ。

 日本人にとって、ごく当たり前の、ある意味、当たり前すぎて口にするのも気恥ずかしく感じてしまう言葉が、なぜ海外で話題になっているのか。

 不確実性の時代と言われて久しいが、個人も国家も先を見通せない中では、人々の不安は強くなる。高齢化が進む社会の中、体の衰えを伴う自分の老後への漠然とした憂い。日常や仕事、健康に問題を抱えている人も少なくないだろう。

「毎日いきいきと生活して、長寿になる秘訣は何か?」

「脳を若々しく保って、いつまでも楽しく喜びのある人生を送るためには、どうすれば良いのか?」

「朝、どうしたら爽やかに起きることができるか?」

 そのような切実な問い、悩みに対する答えが、日本人の〈生きがい〉の中にあると、世界中の人たちが気づき始めたのである。

 ちょうど2年前、ある翻訳エージェントを通じ、ロンドンの出版社から私に本の執筆依頼があった。そのテーマこそが、「日本人の〈生きがい〉」だったのだ。

 依頼に応じ、私が初めて英語で執筆した著作『The Little Book of IKIGAI』は、昨年9月の刊行と同時に大きな反響を呼び、予想外に翻訳の引き合いが殺到した。すでに30カ国、28言語での出版が決まっている。

 自身の本を話題にして恐縮だが、BBCラジオの番組に呼ばれてインタビューを受けたり、地図でしか知らなかった小さな国の新聞社からコメントを求められたりし、世界中で〈生きがい〉への関心が高まっているということを改めて実感したのである。

 今、なぜ、日本人の〈生きがい〉が世界から熱望されているのか、そして、私たち日本人自身がどうしたら〈生きがい〉を深め、しっかり“耕していく”ことができるのか。科学的知見と、私自身の経験を踏まえて考えてみたい。

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