牧場の中に新幹線の駅ができる!? 北海道八雲町「常識破り」の整備計画
新幹線が開通しても、過疎に悩む沿線自治体
インパクトは抜群だ。喜ぶ乗客も多いだろう。それにしても、どうしてここまでユニークな計画を立案できたのか、まずは鉄道担当記者に解説を依頼した。
「15年に開業した北陸新幹線の場合、金沢市の不動産市場は活況を呈しています。しかし北海道新幹線が開通しても、函館市は期待ほど盛り上がってはいません。人口約26万人の都市である函館でも不動産需要が限定的となると、八雲町のような1次産業が主体の自治体だとさらに厳しいでしょう。おまけに悪い前例も少なくありません。92年から99年にかけて、ミニ新幹線の山形新幹線や秋田新幹線が整備されました。しかし両県内では、厳しい過疎化に悩む沿線自治体が目立ちます。こうした“負の教訓”が地方自治体に与えたインパクトは大変に大きいと言えるでしょう」
以上を踏まえて町役場に取材を依頼すると、「現在のところ、観光型の牧場を作るというよりは、本物の放牧地を整備する案で検討しています」という答えが返ってきた。
「町の中心地に位置する現在のJR八雲駅に新幹線駅が接続するなら話は別ですが、新駅は牧草地の中に建設されます。町としては自然環境の保護が最優先です。新駅と町中心地を結ぶ交通整備は重要ですが、それ以外は農業関連施設の整備を中心に考えています。観光に対応した施設としては、地元の産品を味わってもらうレストランなどは開業すると思いますが、宿泊施設が建設される可能性は低いでしょう」(同・町役場)
実は八雲町は「北海道酪農発祥の地」としても知られる。町役場によると現在飼育している乳牛は9997頭、肉牛は2193頭。合計1万2190頭は、町の人口約1万6000人と遜色ない。牛乳の生産量は道南ナンバーワンを誇る。
「放牧する牛の種類も頭数も未定ですが、駅を出ると柵に囲まれた放牧地が広がり、皆さんの目の前に立派な牛がいるというイメージを、できるだけ現実化していくつもりです」(同・町役場)
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