教育上いいの? 「池の水ぜんぶ抜く」の“殺生正当化” 専門家が指摘
“極端すぎる”
この時は、テレ東の社長が定例会見で弁明する事態にまでなったのだが、のど元過ぎれば何とやら。千葉県のお寺の池を舞台に、50人の地元小学生が参加した7月22日の放送では、
「この池に巣くう影の支配者が出たー」「ヤング隊、総動員でブルーギル(外来魚)の駆除に掛かる」
といった大仰なナレーションを合図に、ブルーギルを捕獲。殺生を禁ずる仏教の寺での大量駆除は、ブラックジョークと言うほかないが、子どもたちに命を奪うという実感はないようで、まるでお祭りイベントに興じるかのよう。仕舞には、水も張っていないバケツに、山のように入った魚の映像が流れたのである。
「外来種だからすべて駆除という考えは極端すぎる。いかがなものかと思います」
とは、生態学の専門家で、『「自然」という幻想』の訳書がある慶應大学の岸由二名誉教授。
「番組では、それぞれの生態系をどうしたいのか目標を立てずに、外来種の駆除だけが目的のような印象が強い。私も外来植物の駆除を行っていますが、場所によっては在来種を除去することもある。目標によってケースバイケースで必要な駆除が異なるのです」
在来種か外来種かのみを基準とするのは、生態学的にも疑問だというのだ。さらに、大問題なのは、
「仮にその動物が悪だとしても、子どもたちに乱暴に動物を抹殺させるのは、教育上、いいとは思えない。自然を守るためでも、動物の駆除は大人が行えばいいこと。市民参加でイベントのようにするものではないし、ましてやテレビで面白おかしく放送することでもありません」(同)
殺生を正当化した番組のほうが、外来種よりも悪影響というのである。
[2/2ページ]