冷房つけっ放しorタイマー？ 空調服or人間エアコン？ 我が身 我が子を「熱中症」から守るのはどっち
【Q8 冷やすなら「アイスノン」か「濡れタオル」か】
「体温を下げるには気化熱に頼るしかありません」
とは、先の秋津医師。そこで、単純に身体を直接冷やす2者を比べてみると、
「アイスノンなどの保冷剤は、当てた部分が冷えるだけ。その部分の表面の血管が収縮して血行が悪くなるので、かえって体の放熱作用が阻害され、熱中症に罹りやすくなってしまいます」（同）
これに対して、
「冷水で濡らして絞ったタオルやハンカチを首から胸にかけて掛けると、血管を収縮させることなく広い範囲で気化熱が奪われるので、より効果的と言えます」（同）
手持ちの素材でも、工夫の余地は十分あるのだ。
【Q9 下着は「綿100％」か「化繊入り」か】
一般に綿100％の衣類は、ポリエステルなど化繊混合素材よりも通気性、吸湿性に優るとされる。反面、速乾性については化繊入りが有利なのだが、猛暑ではどちらに軍配が上がるのか。
先の秋津医師は、
「汗がいつまでもベタベタする綿より、速乾性の高い化繊の下着がいいでしょう。比較的短い時間で自然に乾くので、気化熱による体温低下が期待でき、またそれ以上の発汗を防いで脱水を引き起こさない効果も見込める。最近は、綿より汗の吸収量が多いタオル地の下着も売られています」
あわせて服装も、
「ネクタイを外すだけで体感温度が1〜2度低くなります」（東京女子医大の渡辺尚彦教授）
と、クールビズに越したことはないのだが、それでもスーツを着る人は、
「暑苦しいウールより麻やシアサッカー地のほうが薄くて通気性がいい。熱波の中でスーツを着るのならハット、それも頭部の汗を気化熱で逃がしてくれるパナマ帽を被るのがいいと思います」（秋津医師）
そうした“遮蔽物”については、日本体育協会公認スポーツドクターで塩野胃腸科の塩野潔院長も、
「日傘は風通しがよく、使うことで体感温度が7度下がると言われています。猛暑では女性だけでなく男性も差すべきで、実際に埼玉県では、馴染みのない男性にも使ってもらおうと『日傘男子広め隊』という取り組みが展開されています」
照れ臭い、などと言っている場合ではない。
【Q10 屋外作業では「空調服」か「人間エアコン」か】
先ごろ東京ビッグサイトで開かれた「猛暑対策展」では、ともに屋外での現場作業で用いられている2つの“特製ウェア”が展示されていた。まず「空調服」は、ジャンパー状の上着の腰部に扇風機のような小さいファンが2つ装着されている。販売元の株式会社「空調服」の担当者によれば、
「04年より販売を始めました。建設業の下請け業者さんや職人さんが使ってくれて広まり、現在は全てのスーパーゼネコンと取引をしています。2つのファンから毎秒30リットルの外気を上半身に送り、汗を蒸発させて気化熱で4度下げます。風は、襟元や袖口から出ていく仕組みです」
価格は1着2万円前後。ポケットに入れるバッテリーは、最大風量で8時間フル稼働するという。ただし、
「フル充電にも同じく8時間かかります。今後は服の膨らみを抑え、リモコン操作ができる型を発売していく予定です」
一方の「人間エアコン」。こちらはベスト状で、内部を氷水で冷やすという。販売元の「クールスマイル」中西雄三代表に聞くと、
「元々は震災復興のために開発した商品で、実際に2年前の熊本地震の際には、地元の方に提供しました。ボトルに入れた氷水がチューブを伝ってベスト全体に循環し、体の熱を奪ってくれます。設定温度は15度で、生地は厚さ約1ミリ。『水風呂に入りながら外で作業』というイメージです」
ボトルのサイズは500ミリリットルから2リットル。ヒップバッグで支え、氷水はおよそ1時間に1回、交換しなければならない。バッテリーの最大使用はやはり8時間で、価格は大体5万〜8万円。
似て非なる両者だが、前出の田中教授いわく、
「いずれも理にかなった製品です。『人間エアコン』の15度という設定も、暑い中での長時間活動ですから問題ありません。冷感スプレーと違い、温度感覚を変えずに直接体温を下げるので、屋外作業では両者を積極的に使ってほしいですね」
帝京大学病院高度救命救急センターの三宅康史センター長が警告する。
「熱中症のピークは、例年7月末からお盆にかけてです。これから1〜2週間、暑さが続けば、日本が経験したことのない異常事態に直面するかもしれません」
ともあれ、日々の工夫で乗り切るしかないのだ。
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