素麺or冷やし中華? 生ビールor赤ワイン? 我が身 我が子を「熱中症」から守るのはどっち
我が身 我が子を「熱中症」から守るのはどっち?(1/2)
「熱中症で搬送」とのニュースは、すでに日常の光景となっている。さる7月23日には埼玉県熊谷市で気温41・1度を記録。5年ぶりに国内最高気温を更新してしまった。死と隣り合わせの異常気象からいかに命を守るか。最新版の身の処し方を、択一式でお伝えする。
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埼玉の最高記録に先立ち、18日には岐阜で、7月としては14年ぶりとなる40度超えが観測されたばかりだった。総務省消防庁の速報値では、7月16日から22日までの間に救急搬送された患者は全国で2万2647人。昨年の同時期と比べ、実に3倍以上である。
かつて猛暑の季節を迎えると、炎天下でのスポーツや労働で大量に発汗して脱水症状を引き起こす「日射病」への注意喚起がなされてきた。が、いま猛威を振るう「熱中症」とは、高温環境における健康障害の総称。屋外を歩こうが室内に退避しようが、容赦なく我々に襲いかかってくるのだ。ちなみに「熱射病」とは、熱中症の「熱失神・熱けいれん」「熱疲労」といった症状が進み、意識障害が起こる重篤な段階を指す。
帝京大学病院高度救命救急センターの三宅康史センター長が言う。
「今年は間違いなく異常です。観測史上、最も暑かったとされる2010年も大熱波が襲いましたが、あの時ですら35度以上の日はここまで続きませんでした」
その10年当時は、
「梅雨明け直後の7月中旬に第1波が来て、少し緩んだのち8月のお盆前に第2波、さらに台風を挟んでお盆の後に第3波が来ました。つまり何度か暑さは緩んでいたのですが、今年は切れ目がないのが特徴。8年前より危険な状態です」(同)
そうした警鐘を踏まえ、“体調の岐路”に立たされた時に選ぶ道を専門家に尋ねていこう。まず、
【Q1「水」「経口補水液」「スポーツドリンク」か あるいは「にがり水」か】
水分補給は最も重要なテーマである。巷では糖分やカリウム・ナトリウムなどの電解質を含む経口補水液が人気だが、横浜国立大学教育学部の田中英登教授(環境生理学)は、
「そもそもは脱水症状が起きてから飲むもので、日常生活の運動量で汗をかく程度であれば水で十分。この段階で飲めば、塩分の摂り過ぎになってしまいます」
という。またスポーツドリンクについても、
「ナトリウムが入り過ぎているので、水を飲んだ方がいい。塩分を摂らないと低ナトリウム血症を引き起こすなどと言われますが、実際には20リットル以上の水を飲まなければ発症しません」
とは、河村循環器病クリニックの河村剛史院長。さらに続けて、
「実は、夏バテといわれる全身のだるさや疲労感は、マグネシウム不足に起因していることが多い。我々の体内の細胞には数千個のミトコンドリアが存在し、それらがブドウ糖やアミノ酸、脂肪酸を吸収してエネルギーを産生します。その細胞内電解質の組織の主成分であるマグネシウムが不足すると、ミトコンドリアの働きが低下し、エネルギー不足を招くのです」
これを補給するには、
「海水から塩を採った後の『にがり』がいいです。日本人の1日のマグネシウム推奨摂取量は300〜400ミリグラム。患者さんにはccに10ミリグラム入った製品を薦めており、私も毎日2リットルのペットボトルに40ccの原液を入れ、希釈して飲んでいます」
【Q2「コーヒー」「緑茶」か「麦茶」か】
続けて、嗜好品にも目を向けてみよう。
「コーヒーや緑茶には、利尿作用のあるカフェインが含まれています」
そう話すのは、東京女子医大の渡辺尚彦教授。むろん紅茶やウーロン茶にもあてはまり、管理栄養士の荒牧麻子氏が続けて、
「コーヒーや紅茶の場合、クリームや砂糖を入れることが多いので、カロリー過多となるおそれもあります。カフェインが入っていない麦茶や、ほとんど含まれないほうじ茶がおすすめです」
かくして、ミネラルも豊富な麦茶に軍配は上がった。
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