コカ・コーラの新製品がひっそり販売中止へ 飲料業界の“紳士協定”破り?

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中小から生まれた「強炭酸」

 しかしながら、天下のコカ・コーラ社が“紳士協定”を見落とすようなミスを犯すものだろうか。清涼飲料水評論家の清水りょうこ氏は「“業界の常識ではありえない。気付かなかったのが不思議”とあるメーカーの方は言っていましたね」と明かす。

「もっとも、中小は、大手からの仕事を請け負っている『下請け的な立場』でもあります。コカ・コーラ社に申し入れをしたこと自体が、私にとっては驚きでした。厳しいことをいわない“紳士協定”は、よくも悪くも日本的な関係といえます。ただし、中小を守る姿勢そのことは間違っていません。ただでさえ、地サイダーの取材をしていると、『後継者がいない』あるいは『継がせない』という声が聞こえてくる状況ですから」

 先の木村社長いわく、“昭和28年に2千社あった飲料メーカーは、今は100社もないくらい”。大量生産・大量販売ができる大手の体力に立ち向かえず、倒産する中小も多い。

「小規模でいろいろな工夫ができることが中小の強みで、そこから業界全体の流行が生まれることもあります。例えば、今年に入って『強炭酸飲料』が大手からも発売されますが、これはもともと佐賀県の友桝飲料さんが最初に製品化したんです。数年前に高圧ガス保安法が改正され、“世界一の強炭酸を”と思い立ったそうですよ。こうしたパイオニア的な商売をできるのも、中小メーカーの魅力なのです」(清水氏)

 だからこそ“紳士協定”を守ることが重要という話である。最後にコカ・コーラ社に尋ねると、

「ミキサードリンク協会から要望があったのは事実です。販売中止など対応を協議中のため、コメントは控えさせてください」(広報担当者)

 コーラ、もとい、水に流したい様子が伝わってくるのである。

週刊新潮WEB取材班

2018年8月2日掲載

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