中村吉右衛門が仰天告白 〈ガス管をくわえたことも…〉
思わず目を疑う一節だった。日経新聞のコラム「私の履歴書」、7月は二代目中村吉右衛門が登場。その18日付の中ほどに、
〈ガス管をくわえたこともありました〉――
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いわずと知れた歌舞伎界の大御所、人間国宝でもある吉右衛門。だが華やかな経歴とは裏腹に、悩み多き道のりであった。今回の「履歴書」では、若かりし頃の苦悶する姿も赤裸々に描かれている。先の文は、22歳で二代目襲名後、思うような舞台に恵まれず、「このままでは名跡を汚してしまう」と思い詰めての一場面だ。
1944年、八代目松本幸四郎の次男として生まれる。兄はご存じ、後の松本幸四郎、現・白鸚(はくおう)である。次男は母・正子(せいこ)の生家、初代吉右衛門の養子となった。
名門宗家を担わなければならないプレッシャーに、時には自暴自棄になることもあったようだ。
20歳の頃には、役に悩み、こんな記述も。
〈いらいらを抑えきれず、ついに精神安定剤をジンで飲むようになりました〉〈夜中に吐血して救急車で運ばれる事態になりました〉
芸能デスクはいう。
「驚きましたね。以前、語り下しの自伝本で、若い頃は鬱屈して“自殺まで考えた”と仄めかされていたことはありましたが、ここまでリアルに告白するとは。7年前には兄の白鸚さんもこの欄に登場しています。自分にも声がかかり、今のタイミングで全て話しておきたいとなったんでしょう」
連載後半では、吉右衛門30歳の時、12歳年下の知佐さんと結婚し、それを転機に播磨屋の当主として芸に磨きがかかっていく様子が描かれていく。
「今も仲睦まじいご夫婦。4女を設け、家族の存在が吉右衛門さんにとって何より心の支えとなった。6月には、尾上菊之助さんと結婚した四女の長男、和史(かずふみ)君と歌舞伎座で共演したばかり。齢74を数え、辛かった時代も語れる心境になったのかもしれませんね」(同)
吉右衛門の次の出番は、歌舞伎座での大舞台「秀山祭九月大歌舞伎」だ。