夏の突然死を招く「夏血栓」に要注意 30代が心筋梗塞で搬送のケースも
脳梗塞は夏に多い
国立循環器病研究センターの統計によると、脳梗塞は夏(6、7、8月)に罹る患者が最も多い。血管が破れる脳出血が冬場に多発するのとは対照的だ。
「脳梗塞が夏に増えるのは理由があるのです」
とは秋津医院の秋津壽男院長である。
「猛暑が続くと身体は熱を放出するために血管を広げるのです。すると、血圧が落ちて血流が鈍くなってくる。さらに大量の汗をかくことで水分が体外に逃げ、血液が濃くなってしまうのです。ドロドロになった血液の中では血の塊(血栓)が作られやすくなり、それが脳血管で詰まってしまう。これが夏の脳梗塞の原因です」
それならビヤホールで大ジョッキをぐっとあおれば水分補給になる、と思ったら大間違い。ビールには利尿作用があって逆に水分を外に連れ出してしまうのだ。
気を付けなくてはならないのは、夏の脳梗塞が一見、健康な人でも罹りやすいという点だ。
たとえば60キロの体重の人なら体内の血液の量は4〜5リットル。外気が暑くなってくると、汗などで500ミリリットルほどの水分ならすぐに体から出てしまう。そのため、血液は1割以上濃くなってしまうのだ。
「血栓はコレステロールが多い人や血液が濃い真性多血症の人に出来やすいのですが、そうでない人も血栓が作られやすくなってしまうのです」(秋津院長)
熱中症か脳梗塞か
歌手の西城秀樹は2度脳梗塞に罹っているが、1度目はまだ48歳の時だった。2003年6月、ディナーショーに出演するため韓国を訪れた際、サウナで体に負担をかけた後に発症したという。1カ月ほど前から体調を崩していたというが、真夏の暑い日に汗をダラダラかいているのと同じだ。
さらに、夏の脳梗塞がやっかいなのは、熱中症と間違えられやすいことである。暑いなか、急にしゃがみ込んだり、倒れる人がいたら、日陰で休ませたり、水分補給など、熱中症の応急処置を取るものだ。ところが、脳梗塞でそれをやってしまうと手遅れになってしまう。
長年、脳梗塞患者を診てきた米山医院の米山公啓医師によると、
「熱中症か脳梗塞か分からない場合、一番簡単な見分け方として『ドロップハンド法』があります。脳梗塞は身体の左右どちらかに症状が出ますから、動きが違ってくる。やり方は寝ている状態で両方の腕を持ち上げ、ぱっと放す。どちらかの腕が先にパタンと速く落ちると、脳梗塞の可能性が高い。そうなったら一刻も早く救急車に乗せるべきです」
血管内に出来た血栓が肺や心臓の冠動脈に運ばれると、今度は肺血栓や心筋梗塞を引き起こす。「夏血栓」が怖いのは、専門家でもそれが分かりにくいことだ。
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