「村上世彰」が創業家を揺さぶった「出光」「昭和シェル」統合劇
〈私はもう半分リタイアしたような状態で、直接的に何かをどうかしたい、というものはない〉
かつて、ニッポン放送の敵対的買収に参加するなど経済界で暴れまくった村上世彰氏(58)は、昨年出した『生涯投資家』(文藝春秋刊)でこう書いている。これからは、家族とゆっくり暮らしたいと“セミリタイア”を公言していたはずなのに、出光興産(以下・出光)と創業家の争いに首を突っ込んできたのは、いかなる事情からなのだろうか。
異変が起きたのは、6月28日に開かれた、出光の定時株主総会だった。
「出光が進める昭和シェル石油との経営統合に対して、出光昭介名誉会長(91)ら創業家サイドは反対してきました。しかし、会社側は、昨年7月、増資によって創業家の持ち株比率を約34%から26%にまで引き下げてしまう。これに対して創業家も2%の株を買い増しするなど、両者の対立は激化。創業家は、出光の社長の退陣を要求し、昨年の株主総会でも役員の選任を拒否したのです」(石油業界紙記者)
外資系の昭和シェルと社風が合わない、同社に先鋭的な労働組合がある、などが、創業家が反対する表向きの理由だ。
「しかし、実際は支配権が薄れてしまうことや、将来、社名から“出光”を消されてしまうことを警戒しているのです。会社側も妥協案を模索しましたが、創業家が、昭介名誉会長の次男・出光正道氏(出光社員)の社長就任にこだわったことで、交渉はストップしていたのです」(同)
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