地方に現れた「石破茂」の姿に主催者びっくり 石破氏がカバン持ちも秘書も連れずに出かけるワケ

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出迎えの人の驚き

 9月に行われる自民党総裁選を占う記事では、多くの場合「安倍総理の3選が有力。対抗馬の石破茂氏は、どれだけ地方票を獲得できるかが焦点」という見方が紹介されている。

 2012年に安倍総理が復活を果たした総裁選において、地方票では石破氏が勝っていたことが、こうした見方の背景にはある。また、地方創生担当大臣をつとめたことや、無役となった今も精力的に地方に講演などで出向いていることも関係しているのだろう。

 その石破氏は、講演先でよく驚かれることがある、と新著『政策至上主義』で述べている。

 それは「顔が怖い」「目つきが怖い」といった理由からではない。

 ぶらりと現れる姿に驚く人が多いというのだ。どういうことなのか、本人の説明を聞いてみよう(以下、引用はすべて同書より)。

「講演先では、出迎えの方に驚かれることもよくあります。

『一人でいらっしゃったんですか?』

 ほとんどの場合、私は一人で現地に出向きます。基本的に秘書は連れていきません。鞄持ちもいません。出張の鞄くらいは自分で持てます。

 驚かれるのは、きっと珍しいからなのでしょうが、いまどきスマホもあるし、乗り物には自分で乗れるのですから、お連れなんか意味がありません。

 むしろ一人のほうが好都合なこともよくあります。交通機関にアクシデントがあった時などは、人数が少ない方が小回りが利く。しかも私は時刻表を読むのも得意です。

 ある時、北海道の釧路空港から丘珠空港に向かう便が悪天候で欠航になりました。この時は新千歳空港に降りて、札幌まで地下鉄で出向いて間に合いました。地下鉄では偶然乗り合わせた方々と写真を撮ったりもしたものです」

政治家は街頭に出よ

 週平均3回は地方に招かれ、主に地方創生の意義を説明する。それぞれの地域にあわせたマクラ、ネタを準備するので手間もかかる。それでも直接聴衆に語りかけるのは、演説こそが政治の根本だと考えているからだ、という。

「最近の自民党を見ていて危惧を覚えることがあります。どうも、街頭で政策を訴える機会が減っているのではないかと思うのです。

 政治の根本の一つは演説です。少なくとも私はそう思っています。政治家は演説をすることで進化すると言ってもいいでしょう。

 自衛隊のイラク派遣、あるいはテロ特措法の延長など、世論が二分されるようなテーマが生じた際、私たちは積極的に街頭に出向きました。新橋、数寄屋橋、渋谷。夕方、人出が多い時間帯を狙って、不特定多数の国民に、直接、政策の意味や正当性を訴えました。

 民主党が政権を取り、自民党の人気が最低レベルだった時期にも、谷垣総裁を先頭に自民党の議員は街頭に出て、政策を訴えていました。もちろん罵声を浴びせられることもありましたが、それでも訴え続けることが大事でした。

 有権者の生の反応を見る。これは政治家にとってはきわめて大切なことです。ただし、地元の駅前などでの朝の演説、いわゆる「朝立ち」は政策を訴えるうえではあまり意味はありません。朝はみなさん先を急いでいるので、政策を聞いている暇はないのです。一方で夕方であれば、関心のある方は立ち止まって、話の中味を聞いてくださいます。

 最近でも平和安全法制や働き方改革といった国会が紛糾したテーマがいくつもありましたが、その都度、街頭で政策を訴えるといった試みはなかったようです。

 さまざまな人が聞いている街頭で、聴衆を惹きつけるだけの論理を構築することが政治家には求められます」

 テレビやネットの活用も重要だが、それだけではダメだというのが石破氏の信念。

「毎週末のように各地に出向いても、とてもすべての市町村は回りきれていません。これまでに回ったのは、全国1718あるうちのせいぜい350市町村くらいでしょうか。

 お話ししたことすべてを憶えていただけるわけではないでしょう。しかし10のうち2でも3でも残ればいいじゃないか、と思っています」

 たった一人の地方行脚の成果は9月に実るのだろうか。

デイリー新潮編集部

2018年7月20日掲載

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