「水中担架」策、掘削策もあった! 「タイ洞窟救出」に検討された“4つの秘策”

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幻となった「第4案」

 そして第4案が浮上する。少年たちは発見された際、

〈犬や鶏の鳴き声を聞いた〉

 そう救助隊に話していた。周辺には外界に通じる複数の穴があると目されており、そこから実現をみなかったプランも模索されていた。タイ在住のジャーナリスト・齋藤正行氏が言う。

「救助隊の代表は7日、山上から洞窟内に救出用の穴を開けるため、100カ所以上で掘削作業が進んでいると明かしました。ただニュース映像を見る限り、地底に通じている空気穴を山肌で探し、めぼしい箇所があれば人が通れる大きさに掘削するという作業のように見えました」

 前述した10年のチリ落盤事故では、掘削作業で救助穴を開通させ、地下634メートルに閉じ込められた作業員をカプセルで引き揚げた。さきの水島広報委員長が言う。

「人工的な鉱山の坑道とは異なり、今回は自然の中でできた鍾乳洞。時間と労力はかかりますが、落盤の危険は少なく、重機を入れて道を通すのは比較的安全なプランだったと思います」

 また、香川大学創造工学部学部長の長谷川修一教授(地質工学)に尋ねると、

「犬や鶏の鳴き声が本当に聞こえたのなら、地表と洞窟とを繋ぐ『ドリーネ』(すり鉢状の凹地)が近くにある可能性が高いでしょう。ただし鉱山と違って正確な地図はなく、鍾乳洞ではGPSも機能しないので位置情報が把握できません。こうしたケースではまず、洞窟内で発煙筒を焚いて空気の出口を探します。次に『ボアホールテレビ』という、ボーリング孔に挿入する内視鏡のような器材を使ってドリーネの状態を調べる。これで繋がっているとわかれば、あとは上から削岩機を使って力ずくでドリーネを拡張していくのです」

 とのことで、

「石灰岩を弱酸性の水が溶かすことでできた鍾乳洞は、地下空洞が安定していますし、柔らかいので掘りやすいと言えますが、掘削中の安全確保と岩屑を地上に持ち上げる作業が大変です」

 が、このプランは時間を要する。予報に反して大雨が早く降り始め、少年らの居場所が水没する危険が高まった。そこに酸素濃度の低下が追い打ちをかけ、緊迫した状況下、当局はやむなく潜水による「決死の作戦」を決めたわけだ。酸素ボンベとともに大きなリスクを背負いながら、13人は帰還に向けて泳ぎ出したのである。

週刊新潮 2018年7月19日号掲載

特集「『タイ洞窟』13人を襲う大雨! 酸欠!! 『決死の救出作戦』舞台裏」より

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