「水中担架」策、掘削策もあった! 「タイ洞窟救出」に検討された“4つの秘策”
危険だらけの潜水案
「ケーブダイビング(洞窟潜水)は、危険性が高くリスク管理が重要と言えます」
とは、スキューバダイビング指導機関「PADI」のインストラクター・関藤博史氏。というのも、
「まず、ダイバーの現在地から水面までの間に何らかの障害物があり、緊急時にも直接水面に浮上できない『オーバーヘッド環境』に置かれます。透視度が極めて低い状況での潜水であれば、方向感覚を失いやすいのでガイドロープが必須。それを見失うと遭難、そして空気切れによる溺水のリスクが高まります。日本ではスポットも少なく、あまり行なわれていませんが、メキシコや米国フロリダでは盛んで、少数ですが死亡事故も起きています」
ちなみに関藤氏のスクールでは、ダイビングライセンスを取得後、20回以上の実践経験を積んで初めて、閉鎖空間などテクニカルダイビングへの訓練に入るという。見よう見まねで潜水術を覚えた少年たちにとって、いかに危険だったのかは言うまでもない。
「水中でパニックを起こすと、いくら呼吸しても息苦しく感じ、マスクを外してしまうことがある。さらには他人が咥えているレギュレータ(調圧器)を奪おうとするなどの行動に出るケースもあるのです」(同)
日本レジャーダイビング協会のさる幹部も、以下のように危惧する。
「ケーブダイビングは自然光が入らず、ヘッドライトのわずかな光を頼りに進まねばなりません。加えて、子どもたちがパニックを起こさないよう見張りながら泳ぐというのは非常に危険。地上とは違って声は通らないし、透視度が低いのでアイコンタクトも難しい。体をホールドして落ち着かせる手もありますが、水中で子どもに“落ち着け”といっても無理でしょう」
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