「上祐史浩」がひた隠し! 警察も知らない「麻原彰晃」の女性信者殺害
“心臓が止まった”
ところが、だ。
今年4月中旬、残る上祐氏に確認すると、当初は「いや……調べてみます」「わからない」などと誤魔化していたものの、逃げられないと思ったのか、7月8日夜になって事実を認めてこう説明したのである。
「時期は91年のはじめ頃だったと思います。富士山総本部で経理として働いていた吉田さんにお金の件でトラブルがあり、“スパイ”との疑惑がかけられた。彼女は、第一サティアンの2階の部屋に呼び出されました」
そこにいたのは、新実証言と同じく、麻原、新実、中川、村井幹部、上祐氏、女性幹部。「白状しろ!」と、麻原は吉田さんを恐ろしい形相で詰問したという。
「でも、吉田さんは麻原に帰依していたためでしょうか、“思い出せません”と言うばかり。“何で思い出せないんだろう”と、だんだん泣き声になっていった。それが繰り返され、麻原が“思い出せないんだったらポアするぞ”“それでもいいのか”と言っても、“どうして思い出せないんだろう”と。最後に麻原が“私は嘘は吐かない男だよ”と言って、新実や中川に彼女を取り押さえるよう誘導したんです」
彼女は抵抗もなく仰向けになり、新実が顔を押さえた。中川は、注射液と思われる物質の名を出し、麻原に「持ってきましょうか」と提案した。
「麻原が頷き、中川は取りに行った。戻ってきた中川は彼女の左腕に注射した。しばらく後、中川は吉田さんの胸に耳を当て、“心臓が止まった”と言いました。麻原はその間、ソファーにずっと座っていましたが、事が終わった後、“彼女は魔女だと思う”“魔女だったよ”と言っていました」
遺体は、村井幹部が処理したと思われるという。
重大な告白である。直接の実行者が誰か、新実証言とは異なるにしろ、麻原が指示し、幹部が実行した「殺人」には間違いない。それを当事者が認めたのだ。
が、不可解なのは、上祐氏の態度である。
彼は、殺人の最中、女性幹部と共に、3メートルほど離れたところで見ていただけと主張する。
――なぜ声を上げなかったのか。
「驚愕していたので、止めるに止められなかった。それに麻原に帰依している状態ではそれは言えません」
――その後もなぜ事実を隠していたのか。
「麻原への信仰が続いているうちは言えませんでした。(アレフを)脱会した後も恐怖と不安で言えなかった。告白したら自らに危険が及ぶという不安がありました」
――そのせいで吉田さんのご両親は最期まで真相を知ることが出来なかった。
「それは十分わかります。自分の弱さ、恐怖、不安感ですよ」
――その行為は正しかったのか。
「正しくはなかった。でも、どうしてこういうことになったのかと言われれば、そういうことなんです」
等々、自らの責任を回避する理屈をこねるのである。
ちなみにこの件、既に時効が成立して事件化する可能性はない。
しかし、麻原はもちろん、中川も死ぬまで口をつぐみ、あるいは、嘘を吐いてきた。上祐氏も同罪だ。
23年経っても少しも変わらない、これがあまりに悪魔的なオウムの本質である。
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