48人死亡の大口病院 「白衣の殺人鬼」を有罪にできるのか

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決め手はポケット

 いまになって、事件が急展開した理由は何なのか。

 県警担当記者が続ける。

「久保木は、過度の潔癖症である一方、患者の飲み残しのお茶を口にしたりと、一風変わった看護師でした。素行にも問題があったうえに、なにより、西川さんが亡くなる直前、病室に入る彼女の姿が目撃されていました」

 実は、事件から2カ月後には、久保木の逮捕状を取る準備が進められたという。

「でも、検察から待ったがかかった。防犯カメラの映像など、消毒液混入の直接的な物証がなにもなかったからです。そこで、県警は新たな証拠探しに取りかかり、4階を担当した看護師全員のナース服の鑑定を行った。すると、久保木の服のポケットからだけ、消毒液の成分が見つかりました。それが決め手となり、久保木を追及したところ、なんと、“20人以上に消毒液を混入した”と自供したのです」

 近年稀に見る大量殺人の様相を呈してきたのだ。

 しかし、法曹関係者によれば、

「県警が、消毒液の成分を検出できたのは、八巻さん、西川さんを含めて4人。他の患者の遺体はすでに火葬されて、確認しようがない。なおかつ、まずは西川さん殺害容疑で久保木を逮捕しましたが、未だ、状況証拠しかなく、自供頼み。もし、裁判で自供を翻されたら、有罪に持ち込むのも簡単ではないかもしれません」

「白衣の殺人鬼」の病理に司直のメスはどう切り込むか。

週刊新潮 2018年7月19日号掲載

ワイド特集「おしゃべり金魚 浮き沈み」より

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