「情報オリンピック」経験者たちが語る“僕らがプログラミングを始めたワケ”
カオスになる…
その奥田さんは、プログラミング教育の近未来について、こんな指摘をする。
「プログラミングは道具なんです。その意義は二つあって、一つは自動化できること、もう一つは効率よく自動化ができること。情報オリンピックでやっているのは後者です。大事なのは自動化するという考え方で、人間がやらなくてもコンピューターが自動的にやってくれるという世界があると知るのが重要。そして、それを実行させるには“厳密に指示をしなければならない”ということを理解する必要がある」
この一つ先に、「効率よくプログラムが書ける」という段階があるという。
「ここに達するには、プログラムを書いた結果、“自動化されて嬉しい”という体験が必要です。それが逆に、“紙のテストでプログラミング・コードを書かせられる”みたいな授業を受けると、トラウマになる。なぜこれをやるのかが本当にわからないから楽しくないのです。自動化っていうのは本来楽しくなるためにやるのに、そうならない授業をするのは絶対やめてほしいなと思います」
その一方、昨年の「U-22プログラミング・コンテスト」で経産大臣賞のアイデア部門に選ばれた早実中等部3年の菅野楓さん(14)は、
「仮にプログラミングをよく知らない40人を1人で担当するようなら、カオスになる気がします。私が通っていた教室では、先生1人に対して生徒は5〜6人でした。わからないことがあったらみんな手を挙げ、1人ずつ先生が回るという感じでしたね」
と話し、こう続ける。
「私の知人には、セミが好きで小学校の自由研究から大学になるまでセミの研究をずっとやってきた方がいます。セミの翅の構造をプログラミングを使ってテクノロジーで解き明かし、ヘリコプターや飛行体の羽に応用するというような研究をされている。プログラミングと好きな物語を掛け合わせた私と同様ですね。プログラミングは問題を解決するための、とても強力なツールです。プログラミング言語を習得するだけでなく、それを何に使うかが大事だと思います」
プログラミングの道を究めようとするエースやホープは、図らずも同じ意見を口にするのだった。
たとえば、プログラミングによって稼働するAIは自動運転を可能にする。事故はがくんと減り、渋滞からも解き放たれる。あるいは、AI搭載の内視鏡検査器具ならがんやポリープの見落としはぐっと減るだろう。ヒューマンエラーなど、様々な不都合・不利益を取り除くプログラミングは社会と密接に連関する。さて、年収差はどうなっているか。
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