AIエンジニアの年収は米国の半分… “五輪”で金メダルも出た「日本のプログラミング事情」
始めたきっかけは
彼女の父親によると、教室に顔を出すきっかけは、「母親のガラケーで平仮名とカタカナを覚えてしまって自己流に文字を使い出したので、正しく言葉を理解させたい」という流れだった。ともあれ、楓さんの話を続けよう。
「一番最初に作ったのは元素のアプリです。周期表をタッチすると説明が出てきたり、カルタのように全部伏せられている状態から元素の場所を当てるなどの機能をつけました。他にも国旗とか歴代天皇のアプリを作ったりしましたが、だんだん“人の役に立つようなものを”と思うようになったのです」
アガサ・クリスティや江戸川乱歩、コナン・ドイル……。家にあったミステリーやSFを片っ端から読んできた楓さんは、面白い物語には共通点があるのではないかという知的好奇心を「ナラティカ」というアプリに昇華させる。
「これは映画やドラマのシナリオを分析し、ストーリーやキャラクターの気持ちの盛り上がりを可視化するソフトウェアです。時間と共に変化する主人公の感情の起伏を、プラスとマイナスの数値にしてグラフ化しています」
最初は日本の小説で試みたところ、
「日本語には主語がはっきり示されていない文章が多く、コンピューターに分析させるのが難しかった。感情のこもった恋の歌であるはずの和歌を分析しても、マイナスの値がかなり強く出る、つまりネガティブな感情ばかり……ということが重なりました。恐らく、作者の想いを間接的に伝えるという技法を採っているからでしょう。なので台詞や場所、ト書きがはっきりしていて、コンピューターとの相性が良いシナリオから分析を始めたのです」
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