「麻原彰晃」はいかにして「超高学歴信者」を心服させたか “ASC”でコントロール

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天界や地獄のような世界を…

〈「極厳修行」と呼ばれる解脱に必要な集中修行に入るよう指示された。修行は、3カ月ほど続いた。修行する部屋は6畳ほどで、夏なのに窓もすべて閉め切られ、暗室の中での独居修行だった。(中略)この修行の中で、私は、仏教の経典に書かれているようなさまざまな神秘体験をした。最も影響を受けた体験は、深い瞑想(サマディ)による体外離脱である。(中略)体の感覚がなくなったあとに、意識が体外に離脱。上昇して天界のような世界や、下降して地獄のような世界を体験し、体内に戻ってくるのである〉

 これは、早大大学院から宇宙開発事業団に就職しながら、オウムに出家し、外報部長を務めた上祐史浩氏が著書『オウム事件 17年目の告白』で綴った体験談だ。彼のみならず、多くの信者がこのような神秘体験を経験している。たとえば、麻原の三女・アーチャリーが統括した法皇官房の信者はこう語る。

「91年、高校生だった私は、まず在家信者としてオウムに入信。1カ月後、セミナーを受け、ヨガの呼吸法を実践しました。座法を組んで4秒間空気を吸って、12秒止め、そして8秒間息を吐き出す。目を瞑った状態で、これを6時間ぶっ通しで続けました。するといつしか瞼の奥でフラッシュの光が何度も見えてきたのです。驚いて思わず目を開けましたが、周りには、カメラマンなどはいません。他の先輩信者にこれを話すと、“それは神秘体験だよ”と教えられました。その後も神秘体験は続き、オウムに惹かれた私は93年に出家してしまいました」

 彼らはこれを麻原の力による超常現象で、超能力獲得に至る萌芽だと信じ込んでいた。教団自体が、70年代から始まったオカルトブームに便乗し、修行で信者は透視能力やテレパシーなどの超能力を身につけられると喧伝していたからだ。荒唐無稽と言うほかないが、オカルト雑誌には、座禅を組んだ麻原がジャンプする、“空中浮遊”と称された写真も掲載され、信者数は急増していった。もっとも先に述べた通り、こうした体験は、人為的な技術で誘導された末の幻覚に過ぎない。

(2)へつづく https://www.dailyshincho.jp/article/2018/07061537/

週刊新潮 2016年8月23日号別冊「輝ける20世紀」探訪掲載

特集「『オウム真理教』最大の謎を完全解明する! 『麻原彰晃』はいかにして『超高学歴信者』を心服させたか?」より

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