無責任な「逃げ切り世代」にブチ切れ! 先送りのツケを回されるのは79年以降生まれか

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逃げ切り世代への怒り

「新人歓迎会で、50代のおっさんが余計なことを言っていて、絞め殺したくなりましたよ」

 こんな風に怒りを爆発させるのは、ある企業の30代の中堅社員。

「新人に向かって、『俺たちは逃げ切れるけど、君たちの世代は大変だよな』なんて言うんです。これから頑張ろうっていう若者にそんなことを言ってどうなるんですかね。確かにウチの会社は苦しいけど、それを承知で入社してくれた新人ですよ。ホント、バブル入社の人たちってどうかと思いますよ」

 ここまで無神経なベテランがどのくらいいるかは不明だが、世代によって「逃げ切れる」「逃げ切れない」問題がさまざまあることは確かだ。そうした問題は企業に限らず、国家レベルでも存在している。

 よく知られるのは、社会保障制度関連の問題だろう。

 少子化と超高齢化が進む日本においては、今後膨大な社会保障制度関連の予算をどう賄うかが大きな問題になっている。が、長年、政府はこの問題を先送りにしてきたため、解決策は見いだせていない――というのは多くの人の共通認識である。

 では、実際にはどの世代から問題の「先送り」が不可能になるのか。システムはいつ破綻するのか。

 この問題について、元経産省キャリアの宇佐美典也氏は、「団塊ジュニア以降の世代、年齢で言えば現在の20~30代の世代こそが、先送りのツケを全部回される」と語っている。

 その理由を以下、宇佐美氏の新著『逃げられない世代』から見てみよう(以下、同書より抜粋、引用)。

団塊ジュニアまでがギリギリ

 まず確認すべきは各世代の人口だ。最もボリュームがある「団塊の世代+αの5年間の人口」は、以下の通り(2016年時点)。

1947年生まれ:204・1万人
1948年生まれ:216・2万人
1949年生まれ:219・1万人
1950年生まれ:200・7万人
1951年生まれ:187・5万人

合計で1027・6万人になる。

 これらの世代の子供にあたる「団塊ジュニア世代+α」の5年間(1971年~1975年生まれ)の人口はといえば、合計で984万人。団塊の世代とほぼ均衡が取れている。

「つまり団塊の世代は問題を先送りしても、かろうじて1:1でその問題を受け止めて吸収してくれる対象がいる世代ということができると思います。広い意味で『親が死ぬまでの面倒は子が見る』という理屈が社会レベルでも通じる世代です。
 他方で団塊ジュニア世代以下には、それに匹敵する人口の塊が全くありません。つまり団塊ジュニア世代が問題を先送りしても、その問題を1:1で受け止めきれる世代が存在しません。
 したがって、団塊ジュニアが先送りした課題は全世代が均等に負担を上げて、つまり増税を受け入れて、吸収するしかありません。ただこのような担い手と受け手のバランスが取れない社会保障制度は、絶え間ない増税を招き必ず破綻をすることになるので、このような強引な先送り手法が通じるのはせいぜい一世代で、団塊ジュニア以降の世代はそもそも問題を先送りすることができない世代となっていくことが予想されます」

「今の政治」を若者こそ考えるべき

 問題先送りによる影響の直撃を受けるのが、1979年以降に生まれた現在の20~30代にあたるのだ。これはあくまでもかなり大づかみの議論ではあるが、宇佐美氏はこう警鐘を鳴らしている。

「こう考えると、一つの目安として遅くとも団塊ジュニア世代が高齢者となる2036年~40年には内政面で日本の先送り型政治システムの限界が来るものと思われます。
 ここから団塊ジュニア世代が寿命を迎えるまでの20年間はついに日本社会が先送りしてきた課題から『逃げられなく』なり、社会保障制度に関して覆い隠してきたあらゆる問題が噴出し社会変革が迫られる日本社会にとって本当の正念場になると思われます」

 政権のスキャンダルや官僚の不正の追及も些事ではない。が、一方でそのために本質的な問題が先送りされ続けていることに宇佐美氏は懸念を示している。社会保障に限らず、安全保障などすべての分野で客観的なデータに基づく議論が不足している、というのだ。宇佐美氏はこう語る。

「例えば、与党や政権に近い政治家や学者は『人口減少、少子高齢化が始まっても日本の将来はまだ明るい』『アベノミクスで日本は復活だ! 世界に注目され始めている』と過度に楽観的なことを言いがち。
 一方で野党的ポジションにいる人は『日本経済は崩壊だ! ハイパーインフレだ!』『安倍政権は日本を戦争する国に変えた』というように不安を煽りがち。
 せめて国会では政局とは関係のない、未来を見据えた議論をしてほしいのですが、残念なことにそういう状況は未だに実現できていない。
 そのツケを払わされるのは、『年金が不安だ』などと言っている中高年や老人ではなくて、現在の20~30代だということを国民全体の共通認識にすべきではないでしょうか」

デイリー新潮編集部

2018年7月5日掲載

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