米朝首脳会談を受け「蓮池薫さん」語る “金正恩の判断ひとつ、今が拉致問題解決のチャンス”
「8人死亡」のおかしさ
私の経験から言えば、現在も北朝鮮にいる拉致被害者は、それほど悲惨な生活環境には置かれていないと思います。食事や安全、医療などはある程度の保証がなされているはず。
私の場合、招待所での食事は配給制で、1日10ウォンといったように、使える額が決まっていて、米や魚、野菜などをリストから注文できました。飢饉のときでもそう。一般市民に比べればまだ恵まれたほうではありました。
あくまで90年代の話なので、まったく同じ生活ではないでしょうけれど、いまもそれに準ずる生活ではないかと思います。
拉致被害者は対日交渉カードとして使える大切な存在なのです。それなのに、死亡を証明する書類も一切、存在しない。誰がどう考えてもおかしいでしょう。
彼らを取り戻すため、拉致問題解決に向けて、まずは8人死亡4人未入国の報告書を覆せるかどうか。そもそも北朝鮮の報告では、8名分の遺骨のうち、6名分が豪雨で流失したとしています。いくらなんでも、豪雨で流されるような場所に墓地など作りません。
それなのに北朝鮮がめぐみさんを含む8人を死亡とした報告書が覆せないのは、“タイミングを逸してしまった”との側面があるかと思います。
02年当時は、形式的に8人の死亡報告書を出しておけば拉致問題に終止符を打てると考えていたのでしょう。でも、そうはならなかった。こうした成り行き上、死亡とした拉致被害者をこちらに引き渡す機会を失ったままの状態だとも考えられるのです。
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