“中長距離LCC”にいきなり参入 「JAL」を訝しむ声

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

 株主総会シーズン真っ只中である。経営破綻から8年、2018年3月期決算で最終利益1354億円を計上した日本航空(JAL)。植木義晴会長(65)は、余裕で“審判の日”を迎えたはずだ。しかし、LCC(格安航空会社)新規参入を積極的に口にしなかったのはなぜか。

 航空業界に激震が走ったのは、5月14日、JALが突如20年をメドに成田空港を拠点とする“中長距離”のLCC子会社を設立すると発表したからだ。全国紙の経済部記者がいうには、

「破綻したJALは法人税が減免された一方で、新規事業への投資や路線の新設などが制限されていました。昨春、その制限が撤廃されたので、反転攻勢の狼煙を上げたのです」

 地方に拠点を置く、新興航空会社の幹部はJALの動きに警戒心を隠さない。

「JALはLCCのジェットスターへ出資したり、春秋航空日本の整備を請け負っていましたが、LCC参入には否定的でした。そのJALが新規参入すれば、“2030年問題”に拍車がかかり、我々の経営は厳しくなります」

 目下、航空業界はパイロット不足に頭を抱えている。国内には約6400人がいるものの、30年までにその半数が退職する見通しなのだ。

「航空業界では、すでに引き抜き合戦が起きています。JALのLCC設立でさらにパイロットが必要になり、奪い合いが激化するのは目に見えている。昨年、エア・ドゥで起きた問題は決して対岸の火事などではありません」(同)

 昨年8月と10月、エア・ドゥのパイロット39人のうち2人が退職した。その影響で減便や運休が相次ぎ、札幌―広島間は廃止に追い込まれたのだ。JALは組合に対して、破綻時に解雇した“人材”をLCCで再雇用すると打診しているが、

「JALのLCCは2機のボーイング787でスタートして、毎年機体を増やしていく予定。ですが、破綻時に解雇されたパイロットたちは、B‒787の運航に必要なライセンスを持っていない。やはり、他社から引き抜くしかないでしょう」(先の記者)

次ページ:成功例は少ない

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。