「犯罪被害者」たちは何と戦ってきたのか――活動が届けた“最低でも死刑を”の声

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「復讐心が顔に出ている」

 第4回公判で「最低でも死刑を」と声を振り絞った加藤さんの願いが通じたのか、1審の判決は死刑。住田は控訴したが、後にそれを取り下げ刑が確定。昨年7月に死刑が執行されたが、

「知らせを聞いた時、不思議なほど何も感じませんでした。あ、そうなのかと思っただけ」

 と言う加藤さんは、公判中は住田からお詫びや償いの言葉を引き出そうと、躍起になっていたと振り返る。

「人間的な感情が芽生えれば反省する。そうなれば苦しむだろうと思ったのです」

 拘置所にいる住田に手紙を書いて面会も試みたが、そんな時に友人から、「復讐心が顔に出ている」と言われてハッとしたと言う。

「住田にこれ以上エネルギーを費やしてどうする。それより天国の娘に、“お父さん頑張ったね”と言われたい。他にも苦しんでいる被害者を救いたい、そう思うようになったのです」(同)

 あすの会が解散しても、活動を続けると決意を新たにする加藤さんは、

「諸先輩が法改正に向け戦い続けてくれたおかげで、私たちはその恩恵に与ることができた。今度は私たちが戦いを引き継ぐ。被害者の駆け込み寺を作ります」

(下)へつづく

福田ますみ(ふくだ・ますみ)
ノンフィクション・ライター。1956年、横浜市生まれ。立教大学社会学部卒業後、専門誌、編集プロダクション勤務を経てフリーに。2007年、『でっちあげ』で新潮ドキュメント賞受賞。著書に16年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞受賞作を書籍化した『モンスターマザー』など。

週刊新潮 2018年6月21日号掲載

特集「『あすの会』19年目の解散 『犯罪被害者』たちは何と戦ってきたのか――福田ますみ(ノンフィクション・ライター)」より

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