1兆3千億円市場「民泊」に新法で「やめる人」「もぐる人」 撤退ビジネスも活況
撤退ビジネス活況、規制
そういった動きに相まって、撤退ビジネスもまた活況を呈している。
民泊運用代行の「スイッチエンターテイメント」(東京都新宿区)は、昨年2月から撤退サービス「撤退太郎」をスタートさせて、すでに150件以上を手掛けたという。主に家具や不用品の回収を請け負うが、依頼件数は右肩上がり。東京、大阪のほか、京都、奈良、神戸、福岡など対応エリアを急ピッチで拡大中だ。社長の川田雄大氏によると、
「撤退理由は半数が収益悪化。残り半分が、管理組合の規約変更によるものですね。なかには“分譲マンションで民泊がバレた。2日以内に撤退するように言われた”と駆け込んできた依頼主もいました」
なお、撤退急増の陰には、撤退を請け負う代行会社が自ら行政や保健所に違法民泊を通報し、結果、仕事を増やすことにつなげている――といったマッチポンプ風の話もある。魑魅魍魎(ちみもうりょう)もかくやの世界だ。
観光客増加による新規民泊事業への参入と規制、撤退と新設で、いたちごっこの体となっている民泊ビジネス。この6月15日から、それら違法な民泊を規制する新法「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行される。
国土交通省が発表したガイドラインを見ると、事業者(ホスト)は都道府県知事への届け出が必要となり、1年間に民泊として貸し出せる日数は180日(泊)を上限とされる。また、事業者に代わり管理運営を行なう企業も、「住宅宿泊管理業者」となり、国交相の認可が必要となる。これにより、「標識」の掲示、宿泊者名簿の記載、備え付け、また連泊する長期滞在者には定期的に面会を行なうこと、などが義務付けられるのだ。
この新法に加えて各自治体のなかにも、それぞれのルールや規制案を打ち出すところが出てきている。具体的には、「住宅専用地域での月曜正午から金曜正午までは営業を認めない」(新宿区、中野区、杉並区)、「実質土日のみ可能」(世田谷区)といったものだ。
180日しか営業できないとなると、「残りの185日をどう活用すればいいのか、たった180日では採算が合わない」として、新法を機に民泊事業をやめると話す事業者も当然いる。
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