宿泊客を暴行、規約無視で3千万円裁判沙汰も… 新法施行で「民泊」は変わるのか
40個のキーボックス
探偵事務所を経営する合同会社「WhiteColor」(東京都品川区)の中山十蔵社長の元には、ここのところ、無許可営業の現場を押さえて欲しいという依頼が急増しているという。
「依頼主の多くは、大手分譲マンションの管理組合や賃貸住宅の管理会社ですね。騒音やタバコのポイ捨て、ゴミの不法投棄で近隣住民からクレームが上がったとしても、部屋を借りている入居者が、“又貸しして民泊経営をしています”と素直に答えるわけがない。そのため証拠をつかまなければならず、私どもに依頼が入るわけです」
対象物件に張り込んでゲストの出入りを撮影したり、時には直接ゲストにインタビューをして証拠を押さえていくのだが、
「張り込み中、マンション内で住民にナンパを繰り返すゲストを目撃したと聞いたこともあります」
と笑えない現場もあった。
「民泊経営の証拠を押さえても必ずしもやめてくれるとは限りませんし、警察が動くこともない。だから管理会社は大変なようです」(同)
実際、こんなことがあった。ある中層マンションに張り込んでいた時、エントランスの角や植木の中、中庭の柵などで、「キーボックス」を発見したのだ。それも40個。キーボックスとは、鍵の保管に使用されるもので、文庫本の半分くらいのサイズ。ミニ金庫のようなイメージで、4桁の暗証番号でダイヤルを合わせ開閉する。カパッと開けると、中には鍵が1本入っており、ゲストはそれを取り出して玄関ドアへと向かう。メールで事前に暗証番号を伝えておけば、ホストとゲストは互いに会うことなく、無人で鍵の受け渡しができるためキーボックスはとても重宝されている。40個あったということは、1棟の中で40室が民泊になっていたと考えられるのだ。
むろん、この受け渡し方法に問題がないわけがない。ゲストが変わるたびに暗証番号を変えるホストはほとんどいないからだ。とすれば、一度そこに泊まったことがあればいつでも鍵を持ち出せることになる。複製もし放題だ。筆者が使用した民泊では、事前に伝えられていた暗証番号にダイヤルを合わせようとしたところ、すでにその番号になっていた、ということもあった。
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