“ウエスト58cm幻想”は危険 モデル体型を目指し餓死する人も 精神科医が警鐘
モデル体型と虐待
タレントのブログ、インスタグラムで話題を集める定番といえば「セクシーショット」「すっぴん」「激やせ」。前2者はたいてい本人が意図して出しているのに対して、「激やせ」は往々にして、本人が普通に写真を出したら周囲が騒いだり、心配したり、ということになることが多い。
最近では、モデル・タレントの山田優さんがインスタにアップした写真が「脚が細すぎる」と話題になっていた。たしかに足の甲をクローズアップした写真では、血管がくっきり浮き出ていて、ちょっとやせすぎでは……といった声も寄せられている。
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しかし、本人は心配の声が欲しかったわけではなかっただろう。むしろ自ら公開しているくらいなのだから、細い脚をネガティブに捉えられるのは心外かもしれない。
そして実際、多くの女性にとって、脚が細い、ウエストがくびれている、といったいわゆる「モデル体型」は憧れの対象である。だからこそ、多くのモデルやタレントは自身のウエストを過小申告しがちだ。
いくらなんでもリアリティがないということで、最近は多少「正直申告」も増えたが、一時期は誰も彼もが「ウエスト58cm」と自称していた。
しかし、こうした風潮に精神科医の和田秀樹氏は警鐘を鳴らす。和田氏は著書『テレビの大罪』の中で、「ウエスト58cm幻想」を厳しく批判しているのだ。
有名人たちのウエスト過小申告(または偽装)は、多くの人が思っている以上に深刻な問題なのだ、と和田氏は強調する。
「スリーサイズや体重、年齢を偽ることなんて、女性によくある他愛もない見栄じゃないか」「偽装なんて大げさな」といった声に対して、こう反論するのだ(以下、引用は同書より)。
「ウエスト偽装はそれをまねようとする思春期の女性のやせすぎに直結します。これは、世間の想像をはるかに上回るほど危険なことなのです。
女性芸能人がいくらやせているからといって、本当に公表されている通りのサイズの人はほぼいないでしょう。そしてそんなことは大人ならば知っていることなのかもしれません。ところが、彼女たちに憧れる少女たちは、幻想の『58cm』を真に受けてしまいます。
幻想の数字に振り回された結果、彼女たちは適正なボディサイズではなく、やせすぎの体型を目指すことになります」
餓死者まで出ている
和田氏によれば、日本では年間100人ほどが餓死しており、その原因は多くの場合拒食症で、かなりの部分が思春期もしくは20~30代の女性だという。死に至らないまでも、子宮や脳の発達が損なわれている数はもっと多いと見られる。
「現代の不妊の大きな理由のひとつに、過度なダイエットの影響、すなわち思春期にやせすぎていたことによる子宮の形成不全があるのではないか。あまり表立って口にする医師はいませんが、このことを言っているのはなにも私だけではありません」
「激やせ」などという表現だと深刻さが伝わりづらいが、事は命や人生そのものにかかわる可能性があるということだ。「激やせ」を伝える側は、その危険性をもっと周知するように努める必要があるだろう。
むろん、過度な肥満もまた不健康だろうが、メディアはそろそろ「モデル体型」を誉めそやすのを止めるべきではないか。