「金正恩は在日朝鮮人」 韓国政府高官の発言は北朝鮮最大のタブー
出会いは「喜び組」のパーティー
産経新聞は「金正恩氏の母 高英姫氏、隠された真実」(12年2月15日)の記事で、高英姫の生涯を以下のように伝えた。
《高英姫氏は、格闘家の高太文(テムン)氏の娘という説が広く信じられてきた。しかし、北朝鮮の民主化に取り組むNPO「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」(RENK)が北朝鮮内部や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関係者らから得た証言と、在日朝鮮人の帰国者名簿など複数の記録から、父親は韓国・済州(チェジュ)島出身の高京沢(ギョンテク)氏だと裏付けられた。(中略)
関係者らの証言などによると、京沢氏は1929年に出稼ぎのため渡日。陸軍管理下で軍服や天幕を作る大阪市の「広田裁縫所」で働いた。戦後、済州島への密航船を運営し日本の警察に逮捕され、出所後、62年に家族を連れ北朝鮮に渡った。法務記録には「強制退去」と記された。他の在日朝鮮人のように「地上の楽園」を夢見た帰国ではなく、半ば強制的な送還だった。
英姫氏が芸術団の踊り子時代に、金総書記に見初められたことは知られている。韓国に亡命した金総書記の親族らの証言によると後に「喜び組」と呼ばれる秘密パーティーでの接待役に選ばれ金総書記の固定パートナーとなり、76年から平壌の別荘で同居した》
高英姫の存在は「最高機密」
産経新聞の記事は、以下のような結末で結ばれている。
《内部情報によると、出自に加え、金総書記に既に正妻がいたことから側室として扱われた。正恩氏ら2人の息子をもうけたが、金日成主席は当時、金総書記の別の妻が生んだ長男、正男(ジョンナム)氏を後継者とみなし、正恩氏らを正式な孫とも認めなかったという。
金主席死去後は英姫氏を偶像化する動きも表れた。一方で、3代世襲の根拠に「革命の血統」を掲げる北朝鮮に不都合な英姫氏の出自には全く触れず、金総書記死去後は「最高機密」に指定された》
こうして丁寧に辿って初めて、朝鮮日報が報じた記事のインパクトが理解できるだろう。北朝鮮の日本人専門家も「今でも本当に発言があったとは信じられません」と驚きを隠そうとしない。
「韓国でも北朝鮮でも、在日朝鮮人に対する差別は根強いものがあります。だからこそ北朝鮮では、金正恩の母親が在日であることは最大のタブーなのです。発言した文正仁氏ですが、彼はカリフォルニア大学サンディエゴ校教授などを歴任した外交学の専門家です。親北的な発言が多いことでも有名で、韓国社会で物議を醸したことも一度や二度ではありません。そんなバックグラウンドを持つ文教授が、どうして北朝鮮の虎の尾を踏むようなことを口走ったのか、何もかもが理解できませんね」
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