岩村明憲氏が語る「大谷翔平」 ノーステップ打法を続けるとは思わない

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「結果の出ない時期」への備え

 大谷が初本塁打を放った際、ベンチに戻るとチームメイトから無視される“サイレントトリートメント”を受けた。それはメジャー流の祝福の儀式だったが、大谷はかまってくれないチームメイトに両手を広げてアピールし、その後はもみくちゃにされた。

 193センチの立派な体躯ながら、愛らしく人なつっこい立ち居振る舞いで、チームにもすっかり溶け込んでいる様子だ。そして、ベーブ・ルース以来の本格挑戦となる二刀流で、一躍、メジャーの全選手、全世界が注目する存在となった。

「完全試合を達成しそうになった2度目の登板の試合後、彼は『いつか壁に当たった時のための準備をしなきゃいけない』というようなことを話していた。その通りだと思います。必ず結果の出ない時期がやってくる。その日のために、今やっている練習メニューなどは覚えておくといいと思います。彼には通訳もいれば、トレーナーもいて、近くに支えてくれる日本人がいる。結果が出なくなった時に、自分の殻に閉じこもって、日本人とばかり話してしまうことって、日本人にはありがちなんですよ。調子の出ない時ほど、チームメイトと過ごす時間を大切にした方がいい」

 岩村氏は渡米前、東京ヤクルトで一緒だったアレックス・ラミレス(現横浜DeNAベイスターズ監督)と頻繁に食事に出かけ、独学で英語やスペイン語を学んでいた。それゆえ、メジャーに行っても、英語の会話には苦労しなかったという。

「日本に外国人選手がやってきたら、変な日本語を教えるのと同じで、メジャーでも最初はスラングをチームメイトから教わるんですよ(笑)。今後も、そういうコミュニケーションを大事にして、より自己主張できるようになれば、好結果につながっていくはずです」

 今の大谷君にアドバイスすることなんて何もない――そう言い残して、岩村は福島ホープスの練習に戻っていった。

柳川悠二(やながわ・ゆうじ)
1976年、宮崎県生まれ。出版社勤務を経て、フリーのノンフィクションライターとな る。高校野球や柔道など、主にスポーツノンフィクションの分野で活躍し、2016年、 『永遠のPL学園』で小学館ノンフィクション大賞を受賞。

週刊新潮WEB取材班

2018年6月13日掲載

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