片山晋呉選手の「マナー違反」問題 レジェンド青木功の言葉を噛みしめよ

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スポンサーを怒らせた?

 5月30日に行なわれた日本ゴルフツアー選手権森ビル杯のプロアマ戦における、片山晋呉選手の「マナー違反」が大きなニュースとなっている。

 報道で伝えられているように、大会のスポンサーへのサービスという意味合いがあるプロアマ戦で、そのスポンサーサイドを怒らせたのだとすれば、逆効果もいいところ。

 一方で、問題を認識したあとの日本ゴルフツアー機構の対応には一定の評価も与えられているようだ。

 日本サッカー協会相談役の川淵三郎氏は、自身のツイッターで、

「日本ゴルフツアー選手権のプロアマ戦で、前の方で“帰る”なのか“帰れ”なのか大きな怒声が聞こえた。片山晋呉選手の組。後で聞いたらゲストをゲストとして扱わない片山選手の非礼な態度にゲストが怒って帰ったとの事。ツアー改革を強く推進しようとしている青木会長がこれを見逃さず公にした。お見事」

 と述べている(6月7日)。

 川淵氏の言う青木会長、とはもちろんあの青木功氏(日本ゴルフツアー機構会長)のことだ。

 もともとゴルフを通じて社会貢献をすることを強く意識していた青木氏にとって、ゴルフファンを蔑ろにするような振る舞いは看過できないものだったのだろう。

実るほど……

 青木氏がプロ生活50年を経て出版した著書『勝負論』には、今回の騒動を経たあとに読むと、何とも味わい深い文章が書かれている。以下、同書から引用してみよう。

「プロゴルファーになって50年。自分の力だけでは、こんなに長くゴルフ一筋にやって来られなかったと思う。

 クラブやボールを提供してくれる用具メーカーをはじめ、CMのスポンサーやトーナメントの主催者、それから、いつもおれのワガママを聞いてくれる事務所のスタッフや、なによりも大切な家族。色んな人々のサポートがあって今の自分があり、70歳を過ぎて現役を続けていられるのは、そんな方々のお陰である。

 プロになって何勝かした頃、先輩から『おい、青木。“実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな”という言葉を肝に銘じとけよ』と言われたことがある。当時はその意味をあまり理解していなかったけど、歳を重ねていく内になんとなく分かってきた。『おめでとう』と声をかけられて『ありがとうございます』と頭を下げるにしても、その時の気持ちというのかな、5勝した時より10勝した時の方が確実に感謝の想いが強くなった。

 おれはゴルフ以外のことは何も出来ないけれど、青木功という人間を“一角(ひとかど)”の男に育ててくれたのは、ゴルフ以外の何物でもない。だから、そのゴルフを通してお世話になった人への恩返し代わりに『少しでも社会の力になれないか』と考えるところがあった」

 青木氏の社会貢献への思いは、アメリカツアーに参加した経験から、海外でチャリティが盛んな様を目の当たりにしてより強まっていった。近年でも、病気と闘う子供たちの支援や、東日本大震災の孤児らへのチャリティなどにも積極的に関わってきた。

 ときにスポンサー探しにも苦労しながらも、社会貢献につながる活動を続けてきたのだ。それだけに、今回の一件は残念だったのだろう。

 片山選手は、大先輩の教えを熟読すべきなのである。

デイリー新潮編集部

2018年6月12日掲載

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