スイス戦惨敗で西野監督が不用意すぎるコメント 岡田武史氏の言葉を思い出す

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「期待の持てない西野ジャパン」

 試合に関しては、日本はショートパスをつないで中央突破を試みたものの、W杯予選で堅守を誇ったスイス守備陣を崩せない。そこでサイド攻撃に転じたものの、宇佐美と原口はボールを持ってもドリブルで仕掛けたシーンは皆無に近い。攻撃の起点となることでサイドバックの攻撃参加を引き出すことが狙いだったのか、キープしてからのサイドチェンジで長友や酒井のオーバーラップにつなげていた。

 しかし彼らのクロスは長身選手の揃うスイスDF陣にことごとく跳ね返される。唯一、惜しいシーンは前半6分に長友のクロスから大迫がGKと競ったシーンだけ。スイス戦に限らず、W杯の本番でも日本が単純なクロスからゴールが生まれるとは想像しにくい。このためサイドアタッカーの宇佐美と原口は、ドリブルで仕掛けてサイドを崩すべきだろう。その点、交代出場の乾がチャレンジしていたのは数少ない好材料だ。

 4年前とほとんど主力が変わらないため、期待感の持てない西野ジャパン。試合を見ていて、久保や中島がいたらと思ったのは私だけではないだろう。

 最後に、西野監督は代表23人を発表する際にチームのテーマとして「対応力」を挙げていた。4-2-3-1や3-4-3といったシステムよりも、相手の狙いに応じて柔軟にシステムを変えることを選手に求めていた。しかし、これこそ日本人にとってなかなか実践できない深刻なテーマである。言われたことは忠実に守れても、臨機応変に対応できないのが現実だ。

 むしろハリルホジッチ前監督のように、対戦相手に応じて各選手にはっきりと役割を与える対処療法の方が日本人には合っているのではないだろうか。西野監督が求める「対応力」は確かに日本人には必要だし、理想でもある。しかし、そのために残された時間は、あまりにも少なすぎる。唯一の希望は、連敗してもいつもと変わらない西野監督のメンタルの強さかもしれない。

六川亨
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。『サッカーダイジェスト』の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後『CALCIO2002』、『プレミアシップマガジン』、『サッカーズ』の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班

2018年6月10日掲載

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