「悪質タックル問題」日大幹部の「へたくそすぎる敬語」問題
身内への尊敬語
「悪質タックル問題」以降、危機管理やメディア対応の拙さが指摘されている日本大学。
6月1日、再び記者団の前に現れた学長と、付き添った総務部長が見せたのはそれらの問題点に加えて「敬語力の不足」だった。
「(第三者委員会の結論を受けて)その折には理事長からお答えをいただくようになろうかと思います」と、身内の理事長に対して「お答え」「いただく」と話す学長。
補足説明を担当した総務部長も、
「(内田正人元常務理事のほうから)ご連絡をいただきまして……」
「(内田元常務理事から)お申し出がありまして……」
「先ほど学長もおっしゃられていたと思うのですが……」
と内田元常務理事や学長に対してやたらと敬語を連発。
もちろん、これまでこんな風に記者に囲まれ、責められたことはないだろうから、緊張していたに違いない。
それにしても、このタイミングで身内に対して敬語を使うというのは、いかにも「身内に甘い」「上に対して頭が上がらない」組織、といった印象を与えることは必至。
「ついつい外部の人とのやりとりにまで、敬語を使ってしまうほど、恐れているのかなあ」
会見を見て、そんな風に感じた方もいらっしゃることだろう。
さらに、ちょうど就活が始まったばかりのいま、真面目に活動している日大の学生諸君からすれば、「僕たちまで敬語が使えないように見られたらたまらない」というところかもしれない。
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敬語の指針とは
さて、そうはいっても敬語は難しい。
しかも、「最近の若者は敬語の使い方すら知らない」と嘆く方も、最近の敬語事情をご存知ない可能性がある。実は年配者と若者では、「正しい」とされた敬語が微妙に異なる。
というのも2007年2月、国の文化審議会が出した最新の「敬語の指針」(以下、指針)では、従来とは別の分類が示されているのだ。
長い間、敬語の種類は「尊敬語、謙譲語、丁寧語」の3つだとされてきた。「最近の若者は~」と嘆く方たちもそう習ってきたはずだ。
ところがこれが新しい指針では「尊敬語、謙譲語I、謙譲語II[丁重語]、丁寧語、美化語」の5種類に分けられている。
どういうものなのか。
フリーアナウンサーの梶原しげるさんの著書『すべらない敬語』では、この新しい指針について「5分でわかる敬語の指針」というタイトルで解説を加えている。以下、同書を参考に、5種類の違いを見ていこう。
まずは「尊敬語」。
こちらは旧来からの定義と同じ。指針では「相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて、その人物を立てて述べるもの」と定義している。
「立てる」とは、尊敬すべき人物を、言葉の上で高く位置づけて述べること、としている。
具体的には「いらっしゃる」「おっしゃる」「召し上がる」「お名前」「御住所」「お忙しい」「御立派」等々の物言い。
日大学長らは身内の振る舞いについて「お申し出」「おっしゃる」と使っているので、明らかに用法を間違えている。本人と相対している際ならば問題ないが、報道陣という「ソト」の人に使うべきではない。
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