せめて先人への敬意は示して… 「ルンバ」「エアウィーブ」がボヤく“後発組”の奇
「エ●ーウィー●」の欠点を
「当社が高機能寝具では元祖だとは思っていますが……」
とこぼすのは、寝具メーカー・エアウィーヴの広報担当者である。
同社は、07年に開発した独自の繊維素材「エアファイバー」を用いたマットレスを製造・販売している。
若い頃にムチウチに悩んだ経験を持つ、高岡本州(もとくに)会長兼社長が睡眠の質を上げるマットレスを作りたいと製品開発をした。特長は復元性が高く睡眠時の寝返りがラク。さらには高い通気性で夏は蒸れにくく冬は暖かい。そして体圧が分散され、腰骨にも負担がかからず、水洗いできる点にある。
この商品にもルンバ同様、ライバル企業が攻撃を仕掛け、パイの奪い合いが展開されている。例えば、エアウィーヴが浅田真央や錦織圭をCMキャラに起用すると、他社もそれに倣いアスリートを起用する。商品名にしても東京西川は「AiR」や「クラウドウェーブ」、「エアークラウド」、アイリスオーヤマは「エアリー」と、混同しない方がおかしいというものである。
過去、西川のクラウドウェーブの店内POP広告にはこう書かれていたことがある。
「『エ●ーウィー●』の欠点を西川独自技術でバージョンアップして心地よい眠りをサポート」
●は誤植などではない。●を使うことで逆に生々しさが浮き彫りになった恰好だが、エアウィーヴはこれに対してPOP広告表示差止の仮処分を申請。その結果、東京地裁は16年1月、エアウィーヴの申立てを認める決定を下したのである。先の担当者は、
「ウチが『高反発マットレス』『洗えるマットレス』と言ったら他も言ってきますし、販売の店舗でもとかく比較し、こちらへの優位性をアピールされます。内容の類似性はよく見られますが、この市場が大きいと思っている会社が多いのですかねぇ……」
とし、こう続ける。
「会長の高岡は“マネされない技術はない”と言っています。ただし、技術的優位性は放っておくとコピーされてしまうので、色々イノベーションをするんです。それは技術だけでなく、ブランディングなどソフト面もそうです。他社にマネされない点で言うと、『睡眠の質を売っている会社』という哲学でしょう。『これが売れているからこれをマネしよう』という会社とは違い、そこは負けないところだと思います」
「後発組」ではない
NHKスペシャル「睡眠負債が危ない」で紹介された睡眠の質の向上も追求しているという。睡眠研究の第一人者で、『スタンフォード式 最高の睡眠』の著書がある、スタンフォード大学・西野精治教授と共に、10年から本格的な睡眠研究を行なっている。
「睡眠の質が翌日のパフォーマンスに繋がる、という思想から設計された寝具は我々のものだけ、ということはしっかり主張したい。さらに最近力を入れているのは、トヨタグループのアイシン精機、有名ホテル・旅館、電力会社等他業種とのコラボです。そういった各社から選ばれる寝具メーカーでありたいと思っています」
なお、競合のある社は、
「実際は、睡眠について研究して素材メーカーと共同で開発を進めた商品でして、 エアウィーヴの後発組として商品を開発した認識ではございません」
と回答した。
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