東京は「座れる通勤電車」ブーム 大阪は「20年間検討中」のなぜ?

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東京は「普通列車グリーン車」も「専用列車」も人気

 通勤や通学に使う路線でも、有料のグリーン車両が連結されたり、全席指定の専用列車が運行されたりしている――。首都圏の方々なら「ああ、あれね」とイメージしてくれるだろう。だが関西圏の方々は「なんや、それ?」と首を傾げられるかもしれない。

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 まずは首都圏から話を進めよう。東京を中心にJR東日本なら「普通列車グリーン車」、私鉄なら「座れる通勤電車」が人気なのだ。特に社会人の支持が特徴だろう。鉄道に詳しい雑誌編集者が解説する。

「そもそも首都圏は戦前の国鉄時代から、富裕層やエリート層は通勤に2等車(現在のグリーン車に相当)を使っていました。海軍機関学校で講師を務めた作家の芥川龍之介や内田百間は横須賀線の2等車を愛用していたことが知られています。ちなみに芥川は鎌倉駅から、内田は東京駅から乗車しました。芥川の短編小説『蜜柑』も横須賀線の2等車がモデルだとされます」

 この伝統を背景に、JR東日本は首都圏で多くの「普通列車グリーン車」を運行している。主なものだけでも、東海道線、湘南新宿ライン、宇都宮線、高崎線、常磐線、横須賀・総武快速線……と枚挙に暇がない。

「満席で頭を抱えることもありますが、出勤や退社時のラッシュアワーを上手く避ければ座れます。パソコンを使っての仕事も楽ですし、持ち込みでも車内販売でも飲食が可能です。対して私鉄は以前から全席指定の特急電車を活用して『必ず座れる通勤電車』の需要を満たしてきました。京成電鉄のスカイライナーや小田急電鉄のロマンスカーなどが代表例でしょう。そして15年に京浜急行電鉄がモーニング・ウィング号、17年に西武鉄道がS-TRAIN、そして今年は京王電鉄が京王ライナーをデビューさせました。JRも中央線に普通列車グリーン車両を投入する準備を始めるなど、近年は再ブーム到来の感があります」(同・編集者)

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