63億円を取られた「積水ハウス」 詐欺から1年、背景に地面師と暴力団の影

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小林兄弟

 それから間もなく、積水ハウスが登場してからは、既報のとおり。同社が買収に積極的だったこともあって、契約はとんとん拍子に進む。

「積水ハウスとの契約にあたっては、小林氏も同席し、いったん、IKUTAホールディングスに払われた手付金(預金手形)を自分の口座で現金化しています。さらに、それをA子の口座に振り込んでいる。いうなれば、小林氏は、金の流れの中継役を担っていたことになるのです」(同)

 さらに、事件の周辺にはもう1人の「小林」が登場する。手がかりとなるのは、積水ハウスがA子に売りつけようとした新築マンションの取引の際に残された売買契約書だ。

〈平成29年6月1日

(買主)A子

(売主)積水ハウス株式会社

(仲介)小林(以下実名)〉

 別のブローカー氏によると、

「契約書に出てくるのは、小林氏の実兄です。都内で不動産会社を経営していますが、彼も海喜館の売買話に首を突っ込んでいる。それもあって、積水のマンションの契約の際にA子の側から仲介業者として入れてくれと要求して来た。これだけで手数料は2000万円近くになる計算です」

 前代未聞の詐欺事件に登場する「小林兄弟」は、どんな人物なのか。が、その父親の名前を聞けば、裏社会の誰もが怯むはずだ。

「住吉会(旧住吉連合会)の本部長を務めた小林楠扶(くすお)氏です。関東の暴力団の世界では“伝説”の人物で、住吉会のナンバー2でした。“小林兄弟”は楠扶氏の長男と次男なのです」

 そう解説するのは、ヤクザの世界に詳しい関係者だ。

「昭和5年生まれの小林楠扶氏は、戦後のドサクサの中で、私設自警団の『銀座警察』に身を投じるところから任侠の世界のキャリアをスタートさせています。その後、銀座を拠点に小林会(二次団体)を旗揚げし、一方で右翼の楠皇道隊を設立する。同団体は、後に日本青年社と名を変え、日本最大の右翼組織に成長しました」

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