下は最低賃金以下のブラック労働! トップは不正選挙で政界入り狙う?! 究極の格差組織とは

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「まだやっているの?」

 小学生の子を持つ、ある母親から「ベルマークって、ご存知ですか?」と、切り出された時、『PTA不要論』の著作がある、ノンフィクション作家の黒川祥子氏は「まだやっているの?」と驚いたそうだ。

「私が小学生だった大昔、確かにベルマークのついた商品を買って、マークを集めて、学校に持って行ったことを思い出します。でも、今や平成の世も終わろうとしているのに、それが続いていること自体に、まず驚きました」(黒川氏)

 ベルマークとは、協賛企業の商品パッケージなどについている、小さなマーク。それを集めてベルマーク財団に送ると、1点につき、1・27円の「市場調査費」が協賛企業から支払われ、このうち1円分がPTAなど参加団体の預金口座に入り、その学校の設備が購入できる「教育設備助成費」になる。残りは財団の運営費にあてられる。

 黒川氏に訴えた母親は、さらに続けた。

「切り取った1~2センチの、薄い小さなベルマークを回収して、会社ごとに分類。それをさらに点数計算してと、ものすごく煩雑な作業を、平日の昼間に、PTAのベルマーク委員になった母親たちが集まって延々とやるんです。エアコンの風やくしゃみで飛ばないよう、空調を切って、マスクをつけて作業にあたる人もいます」

30人で作業して数千円

「あまりにバカバカしい」と、その母親が訴えるのも、無理はない。100円の商品についているベルマークは、おおよそ1点。せいぜいが4~5点で、1点未満のものも多くあり、いわば1円前後を、延々と切り貼りする作業になるのだという。

「30人で作業して数千円。パートの時給を寄付した方がまし」「私たち母親はメーカーなどにうまく利用されているのでは?」と、あちこちで評判の悪いベルマーク。黒川氏に訴えた母親も、あまりの不合理さに、PTA本部役員や会長に見直しを提案したそう。

「協賛企業もどんどん少なくなってきている。それに学校に寄付するために選べる商品は限られていて、本当に必要な物があるとは限らない。価格も高いのか安いのか、正直判然としないそうです。しかもPTA会費は余っていて、毎年繰り越しているのだとか。そもそも学校にだって予算があるはずで、何らかの理由があって、学校に予算がつかず、買えないものがあるとしたらですが、余ってるPTA会費から購入して寄付すればいい。なのに、本部役員や会長は首を縦に振らなかったそうです。理由は『子どものためだから』」(黒川氏)

 その母親は自嘲気味に「計算したらパートの賃金どころか、最低賃金以下でした。袋貼りやシール貼りといった内職の方が、よっぽど高給でしょうね。働いているPTA役員も多いですから、そうした方々の有休分の時給を計算に入れたら、あきらかにマイナスでしょう」と語っていたそう。

 企業であれば、これほど人件費がかかりすぎる作業は、とっくの昔に見直されているはずだ。PTAはボランティアとはいえ、組織運営が非効率なままでは、誰もPTAの委員、本部役員や会長も引き受け手がないと思うのだが――。

会長決めの推薦選挙で不正発覚!

 黒川氏によれば、「PTA会長というポストはある種の人たちにとっては、喉から手が出るほどオイシイものでもあります」という。

「4人の子供がいらっしゃる、あるお母さんから聞いたのですが、その学校でPTA会長をやっていたある男性が、ずっと会長職をやりたかったようで、推薦用紙を偽造して、自分の名前をたくさん書いて投票したことがあったそうです」

 どこのマフィア国家の話かと見まごうばかりだが、PTA会長になぜそこまで固執したのか?

「塾の経営者で、区議になることを狙っていたのだとか。確かにPTA会長が、区議や市議、さらに地方自治体の首長へとのぼりつめる、一つのステップになっているんです。そういう人には、地元の小中学校のPTA会長というのは、自分に箔を付け、名を売る、絶好のポストなんです」(黒川氏)

 その学校では、不正が発覚してから、犯人探しが始まり、投票用紙の筆跡鑑定まで行われたというから驚きだ。結局、ある父親が片棒を担いでいたことが発覚したが、その時の本部役員はもちろん会長含め全員交代し、その後も一切役員に声がかからなかったという。

 下は最低賃金以下の内職仕事で、上は政界入り狙いの不正とは……呆れるばかりの“ボランティア組織”ではないだろうか。

デイリー新潮編集部

2018年5月31日掲載

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