再発率8割だから知りたい「肝臓がん」の予後 AIが切り拓くがん治療の最先端

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再発時期がわかる

 これまで紹介してきた「がん治療」でのAI使用は、あくまで診断を目的としてきたが、一度でも罹患して“生還”したサバイバーが気になるのは、やはり術後の暮らし。特に5年以内の再発率が8割と高い肝臓がんではなおさらだが、昨年8月には他に類をみない「予後診断システム」が発表されていたのだ。

 山口大学と共同開発した東京医科大学の黒田雅彦主任教授はこう断言する。

「肝がん患者の予後を見ることに関しては、医師よりAIの方が勝っていると思いますね。AIに組織片の画像を見せるだけで、再発するのが1年後なのか、3年後か、5年後かが分かる。しかも、この判断にかかる時間は僅か数十秒です」

 もともと、治療で切除された患部は、病理医が観察して手術が成功したかを判断しているが、再発するリスクまでは正確には分からなかった。

 そこで、黒田氏らは、肝臓がん患者の病理画像から肝細胞の核100万個を抽出し、大きさなどを計測、その形や特徴を約100種類に分類。これらの核が再発したかどうか、その時期などを含めてすべてをデータ化してAIに覚え込ませた。実際、このAIを使った検証実験では、患者15人が5年以内に再発する可能性を、すべて言い当てることに成功したのだ。

「法律の関係でまだ臨床への応用はできませんが、医療機関を通じ個別の相談という形なら、このシステムを利用していただくことも可能です。けれど、現状では再発しないように治療法を抜本的に変えることはできないのです。ゲノム医療が発展すれば、効果が期待できる適用外の未承認薬を用いるなどの対策がとれますが、今の保険医療の枠組みではがんを予防したり、再発可能性が分かることが前提となっていません。もちろん、再発すると分かれば頻繁に検査に行くという対策はとれますから、患者さんがAIに診断してもらうことは大切だと思っています」

(4)へつづく

週刊新潮 2018年5月24日号掲載

特集「0.02秒で超早期発見! 再発リスクも完全予測!! 『AI』が切り拓く『がん治療』の最先端」より

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