史上初50代メジャー制覇 「谷口徹」が魅せた18番ホール
50歳のベテランはゴール直前、先頭をゆく28歳の背中を追いかけていた。はたして追い抜く気力は残っているだろうか――。
千葉・房総CC房総で行われた男子メジャー「日本プロゴルフ選手権」(優勝賞金3000万円)はまさにそのような状況だった。
最終日最終組の17番ティー。谷口徹(50)は同組の首位・藤本佳則(28)に2打差をつけられていた。
2ホール前から激しくなった風雨が影響したか、藤本はアプローチをミスしてボギー。しかし、谷口もまた5メートルのパーパットを残してしまった。
「これを決めないと絶対に勝てないと思った」
とは試合後の谷口。彼はこれを沈め、1打差とした。
最終18番パー5。藤本はパー。ここでも谷口は5メートルのパットを残した。ただし、今度はバーディパットだ。
「何度見てもラインがわからなかった。感覚を信じて打った」
と谷口。このパットも見事に沈めた。大歓声。勝負は、18番をくり返すプレーオフにもつれ込んだ。
1回目は両者ともパー。
2回目はティが前にずらされた。藤本の飛距離なら2オンが狙える。谷口には不利となった。
第1打は、藤本が曲げてラフ。谷口はフェアウェイをキープしたが、第2打がバンカーへ。共に3オンしたが、藤本がやや長く残した。先に打った藤本のバーディパットはカップ縁をかすめて、惜しくもパーに。
これを見た谷口は、
「次(3回目)に行ったら負ける。決めるしかない」
三たびの5メートル。強い気持ちを込めたウイニングパットはまっすぐとホールに吸い込まれていった――。
50代のメジャー制覇は史上初の快挙。シニアツアーに参加する年齢だが、これで5年シード獲得だ。6年ぶりの美酒に涙が零(こぼ)れた。