PTAには無駄な労力がいっぱい 何のため? が言えない組織に違和感

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卒業してよかったPTA

 今や日本全国で、春になれば母親たちのPTA役員決めを巡る悲鳴が聞こえてくる――。著書、『PTA不要論』でそう喝破するのは、ノンフィクション作家の黒川祥子氏だ。

 2児の母である黒川氏をして「卒業してよかったと、心から思えるものがある。それが、PTAだ」と言わしめるPTAとは一体どんな組織なのか。「俗悪テレビ番組」を追放する以外に、どんな活動をしているのか。同書から、驚くべきその実態を拾ってみよう(以下、引用は『PTA不要論』より)。

無駄な労力

 東京23区の山の手地区に住む、高3と高1の子を持つ杉原尚美さん(47、仮名)は、ぴしゃりと言い放つ。

「なり手がいないから、簡単だけを強調する。だけど実際にやってみると、簡単な仕事であっても、無駄も含めて、膨大な量があって、とにかく忙しいんです」

 尚美さんの経験では、とりわけ小学校のPTAがきつかった。

「春は入学式の手伝いから始まって、先生の離任式だ、総会準備だ、予算チェックだ、名簿作りだと、次々に目の前に仕事が現れて、『このやり方はおかしい、改革しないと』と疑問に思っても、そのままやらざるを得ないんです」

 とりわけ、不合理さを感じたのが名簿作りだった。昨今、個人情報保護法により、学校がPTAに児童生徒の名簿の提供を行うことが禁じられている。

「だから2~3カ月かけて自前で、PTAの名簿を作るんです」

 大変な手間だが、作成方法も旧態依然のままだった。

「まったくデジタル化されていなくて、全部、目視でチェック。住所、きょうだい関係など間違っているところがないか、役員同士でチェックしあうわけです。この労力、ばかばかしいと思いませんか? こういうことで疲弊するわけです」

 平日は仕事のため、尚美さんは自分のクラスの名簿を夜に家で作ろうとした。

「そうしたら、情報流出の恐れがあるから、学校でしか、作業をしてはいけないと言われてびっくりしました。働いてますから、これって『土日に学校へ行って作れ』ってことですよね。行きましたけどね。バカバカしいと思いながら。だけどPTAのセキュリティはすごく甘くて、PTA室にあるパソコンは誰でも簡単に開けます」

 名簿作りの期間中、お菓子を購入する「おやつ係」までできたという。役員は弁当持参で、朝から夜までPTA室で過ごすことになる。

「もう『PTA室に住んでる?』みたいな。役員の弁当代がかさむから、その弁当代をPTA会費から出すことに、賛成か反対かというアンケートが回ってきましたよ」

 尚美さんは呆れ果てた。

「だって、仕事内容を見直すとか、思いきって名簿をやめてメーリングリストにするとか、大変な労力を変えて行く方向にではなく、弁当代に行くのかってことが驚きでした」

何のためなのか、わからない

 前回登場した萩野早希さんは、実際にクラス委員を引き受けて、とにかく驚いたという。

「4月と5月だけで、平日に何度も学校に呼び出されるんです。運営委員会に総会の準備と、やたら会議があるんです。そのたびに上司に頭を下げて、学校へ行くのですが、会議に出たら出たで、書面を読み上げるだけで終わるという……」

 早希さんは嘆息する。

「こんな会議をやるくらいなら、電子掲示板とメールで済むと思いました。大の大人を集めてこれ? って。会社でこんな会議をやったら、責任問題になるんじゃないですか? だって、みんな暇じゃないんですから」

 PTA総会も、シャンシャン総会だったという。

「ただ用意された書面を読み上げ、型どおりに説明して承認を得る。予算はこうで、活動内容はこうでと会長や担当役員が説明して、どこからも誰からも異議なんて出ない。さあ、拍手で承認、シャンシャンシャン。最初から最後まで台本通りにこなして、それで終わり」

 早希さんは実際に役員になって、本部役員と接触して更なる驚きを味わった。

「保護者会で私たちを軟禁状態にした本部役員のお母さんたちが、3月と4月は毎週どころか、ほぼ毎日、学校に呼び出されてたことを知りました。事前に全部、文書化されている『シャンシャン総会』の準備も含めると、自宅でもずっと、何かやってらっしゃるんでしょうね」

 PTAとは膨大な雑務に忙殺させることで、母親たちから考える時間を奪うためにあるのかと、疑いたくもなってくる、と黒川氏は同書で指摘している。

 次回はPTAの「あるある」事件簿をご紹介する。

デイリー新潮編集部

2018年5月24日掲載

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