「平尾脱獄囚」が逃げ出したスパルタ刑務所 元受刑者が明かす“ゴマをするのが得意な男でした”

国内 社会

  • ブックマーク

“コラァ!詰めるぞ!”

「入寮してから3週間は、“預かり”と言って、新入寮生は先輩と共に動かなくてはいけない。足音を立てたり、靴をすって歩いていたりしたらすぐに“コラァ!”“詰めるぞ!”などと怒鳴られますし、食事中も“脇を締めろ!”“音を立てて茶碗を置くな!”と事あるごとに注意。ひげを剃り忘れても、スリッパを並べる時に少しズレていても説教。布団を畳む時に少しでも端がズレていたら、2時間は説教ですよ。“お前は大井でもこんないい加減な作業するんか!”とね。口答えなんかしたら、すぐに思いっ切りどつかれるか、胸倉を掴んで刑務官のところへ引きずられていってしまうんです」 

 これらに加え、下っ端の寮生が最も緊張を強いられるのは、朝の「唱和」なるルーティンだったという。

 鼻息を荒げて「会長」が続ける。

「毎朝の朝礼の際、会長に“〇〇!”と指名されると、予め覚えさせられていた『大井七則』『五姿勢』『三大目標』の3つを諳(そら)んじなければいけない。大井七則とは、“一つ、自ら考える!”“一つ、教えを聞く!”“一つ、謙虚である!”などの寮生の規則です。『姿勢』『目標』を加えて全部で15の項目をすらすら言えなければドヤされますから、毎朝、起きた瞬間からビビりながら朝礼を迎えるのです」

 平尾がこの寮に入ったのは、昨年の12月。脱獄するまで日々、こうしたスパルタを味わっていたというワケだ。

週刊新潮 2018年5月17日号掲載

特集「牢名主が証言!『タフガイ脱獄囚』が耐えられなかった『スパルタ獄窓記』」より

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。