米ゼロックス統合 混迷に「富士フイルム」安堵の声のワケ

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525兆円まで拡大

 目下、ゼロックスと“物言う”大株主との争いは法廷闘争に突入している。

「17年3月期決算を見ると、富士フイルムHDの総売上は約2・3兆円。事業構成はインスタントカメラなどの映像事業が15%、医療機器や化粧品などのライフケア事業が39%、事務機器事業が46%を占めている。法廷闘争が長引けば、富士フイルムHDは今後の経営戦略の見直しを迫られるでしょう」(先の記者)

 だが、富士フイルムHD社内に悲壮感は漂っていないという。富士フイルムHDの現役社員がいうには、

「ゼロックスを買収できなくても、それほど痛手にはなりません。富士フイルムHDは、かつて“家業”だったフィルム事業から多角化への“業態転換”に成功している。今は事務機器事業が重きをなしていますが、ライフケア事業主体の企業に転換するのが最終的な目標ですからね」

 オフィス機器の世界市場は、ペーパーレス化などの影響で先進国を中心に年々縮小している。米ゼロックスの決算も、17年12月期の純利益は5億7000万ドルと、過去3年間で半減しているのだ。

「“ゼロックス買収難航”のニュースが流れると、社員の間からは“無理することはない。逆に良かったかも”と安堵の声さえ上がっています。事務機器に比べて、ライフケアの世界市場は年々拡大を続けている。20年は311兆円を見込んでいるが、30年には525兆円まで膨れ上がるとの試算もある。富士フイルムHD傘下には、有望な医療・医薬品メーカーが多いので、そちらに資金を投下した方が賢明だと思います」(同)

 万が一、統合計画が白紙に戻ったら、古森会長の経歴に多少の傷はつくかもしれないが、会社が大きく揺らぐことはなさそうだ。

週刊新潮 2018年5月17日号掲載

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