リケジョ社長が解析 “三大疾病リスク”から“肌に合う化粧品”も分かる「遺伝子検査」最新事情
倫理的に扱わない疾患も
医療分野では近年、抗がん剤をその人の遺伝子に合わせて選べるようになっている。抗がん剤の原材料に対してアレルギーがあれば元も子もないからだ。他方、美容面でも、キメやハリなどについて調べたうえで、望ましい商品を提案する場面は増えつつある。例えばシミができやすいのが遺伝的にわかればホワイトニングに傾注すべしとアドバイスを受けるといったように……。もっともこの点、海外の方が一日どころか二日の長があり、サービスはキメ細かい。日本でも近い将来、個人の体質や遺伝子情報に合わせた化粧品を選ぶ時代になるだろう。(海外の参考サイトSkinDNA http://www.skindna.com.au)
ほとんど全ての疾患や体質は、遺伝的要因と環境的要因の相互作用で起こるものであり、確定的ではない。その遺伝的要因の影響の大きさは疾患によって違う。この点は誤解されがちだ。
「がんの中でも乳がんは非常に遺伝的要因が高い。逆に肺がんは遺伝的要因が10%ほどで、それよりも喫煙や副流煙など環境的要因の影響が大きい。従って仮に遺伝リスクが高くても、自身の生活改善によって予防できます」
他方、遺伝的要因だけでほぼ確実に発症するとわかる単一遺伝子疾患というものもある。筋ジストロフィーや、アンジェリーナ・ジョリーががん予防のために乳房を切除し、卵巣を摘出した際に話題となったBRCA1や2といった遺伝子の異常による疾患がそれだ。
「こうした単一遺伝子疾患は遺伝子検査の結果情報を提供すること自体が医療行為となってしまいます。そして予防の行動をとることができない、場合によっては治療法も無い、という非常にセンシティブな情報となるので当方では扱っていません。また、精神疾患に関する項目も倫理的な理由で扱っていません。例えば、うつ病になりやすい遺伝子という結果によって精神的負担を受け、発症してしまう可能性があるからです」
高橋さんの説明にあったように、唾液だけでわかることは多岐に亘っており、大きく分けて体質と健康リスクになる。前者は肝機能の指標やニコチン依存、就寝時刻が遅めか否か、匂いに敏感かどうか、ストレスを感じやすいかといった細かな部分まで見ることができるのだ。
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