追悼「西城秀樹」さん 「郷ひろみ」「野口五郎」と語った貴重な“還暦鼎談”
「来年もここでちゃんと歌ってなきゃいけないな」
【郷】 まだまだたくさんの苦労や、思いもよらない経験をすると思う。でも、そういう経験ができるのも僕たちの仕事というか、芸能界にいるということなんだと思います。2人もそうだろうけど、人に見られているということが自分を奮い立たせるのかな。
【野口】 僕は今までとは全く別のことを考えるようになった。先週のコンサートは12年からオーチャードホールでやっている毎年の恒例行事なんだけど、あの素晴らしいステージに立たせてもらえることへの感謝をこれまで以上に強く感じるようになった。同時に「来年もここでちゃんと歌ってなきゃいけないな」って、終わった瞬間に思うもの。
【西城】 なるほどね。
【野口】 以前はそんな意識はなかった。僕は自分が歌っているのが当然だと思っていたから。
【郷】 そういう「場」があるということは幸せだよね。
【西城】 うん、ホントにそう。
【郷】 いつも思うんだけど、郷ひろみという存在は、僕の歌を聴いてくれる人たちがいるからこそ。僕の存在価値は、まさにそこにある。聴いてくれる人がいなかったら、僕って何もないんだって年齢を重ねるほど考える。若い頃はそんなことは全く頭になかったけど。
――「新御三家」と呼ばれた彼らは多忙を極めた。当時から、そんなスターだからこそ共有できる「感覚」があったという。
【郷】 「新御三家」って言うけどさ、本人たちは意識していなかったんじゃない?
【西城】 全然気にしてないね。
【野口】 僕も同じ。
【郷】 周りが言っているだけで(笑)。誰かが勝手に言い始めただけだから、特別な意識はなかったかな。
【野口】 それね、この間、(元祖・御三家と呼ばれた)舟木一夫さんとご一緒したので話をしたら、同じことを言ってた(笑)。意識と言えば、お互いのことは……。
【西城】 ああ、アイツ頑張ってるなあ、というのはあったけど。「俺も頑張らなきゃ!」って。
【郷】 それぞれが立ち位置や見せ方、方向も違うんだけれども、頭のどこかに必ず存在している。そういう意識は間違いなくあったかな。
【西城】 そうだね。
【郷】 やっぱり、秀樹がこういうことをしたら、或いは五郎がこういうことをしたら、「ああ、なるほどな」とか、「素晴らしいアイディアだなあ」って感心したり。でも、僕がそれをやるわけにはいかない。ただ、「じゃあ僕も何か考えよう」って刺激は受けた。それは凄くプラスになったよ。
【野口】 なるほどね。3人で出た番組ってそんなに多くはなかったっけ?
【郷】 毎週、いや、毎日のようにあったよ。
【西城】 あったと思うけど。
【野口】 3人のうち2人が一緒というのはあったけど、3人一緒って……。
【西城】 雑誌の「明星」とか「平凡」とか?
【野口】 いや、テレビでさ。
【郷】 『紅白歌のベストテン』、『レッツゴーヤング』、『夜のヒットスタジオ』とか。
【野口】 そうだっけ。
【西城】 でも、3人一緒というのは少なかった?
【野口】 まあ、仮に一緒になっても、ほとんど話なんかできなかっただろうけど。
【郷】 忙し過ぎたよ。挨拶はしても、じっくり話している余裕なんてなかった。
【西城】 収録、移動の繰り返しだったもんね。
【野口】 あの頃って、歌番組だけで週に50本以上あったって。1週間でだよ。
【郷】 そんなに?
【野口】 僕も最近知ったけど。
【郷】 一緒じゃなくても、全部出てたってことだよね?
【野口】 そう、全部に出てる。
【郷】 凄いなあ。レギュラーじゃなくても、出演する番組は毎日あったわけだよね。
【西城】 歌番組ばっかり。
【郷】 他にラジオもあったし。
【野口】 僕らがあの時代を共有したことは大きいと思うよ。だって、今でもどこかで会った時に「おう」っていえば、それでオーケー。
【西城】 そうね。一言で、お互いに全てが伝わっちゃう。
【郷】 他にこういう存在はいないよ。やっぱり、同じ時間を過ごしてきた同士っていうのは貴重だなあ。
【西城】 お互いに特別な存在なんだね。でも、レコードの売り上げ枚数を競うような意識は全然なかったなあ。
【野口】 それはないよね。僕なんか、とくに30代は、ほとんどミュージカルや舞台をやってたし。
【西城】 むしろ、そういう意識があったのはスタッフの方じゃない? 「負けない」「頑張ろう」って。マルベル堂のブロマイドの売り上げだって、当人たちは全然気にしてなかったよね。
【郷】 そうそう(笑)。仮にスタッフに教えられていたとしても、それで一喜一憂はしなかったと思う。
【野口】 それこそ、目の前の自分のことで精一杯で。
【西城】 本当に忙しくって、休日なんか一切なかった。でも、それさえ気にする余裕なんてなかったし。
【郷】 当時、休んだ記憶はないんじゃない?
【野口】 ないのが当たり前で。
【郷】 休みたいとさえ、思わなかったなあ。
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