「首相官邸」御用達でも忖度ナシ 高級料亭の倒産危機

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従業員が可哀想

 それでも、途中で取引を止めることはできなかったと、社長は臍(ほぞ)を噬(か)む。

「この世界は、料理人と仕入れ業者は一心同体みたいなところがあってね。店が始まるのに、魚が届かないんじゃ大変でしょう。頑張って働いている従業員が可哀想だから、お金が貰えないからと急に仕入れを止めることはなかなか出来ない」

 それでも提訴したのは、小山氏の「嘘」が許せなかったからだと社長は憤る。

「『青柳』はおせち料理が有名で稼ぎ時だけど、仕入れも200万〜300万円と跳ね上がる。だから念を押すと、小山さんは“販売する百貨店が肩代わりするから大丈夫”と自信満々でした。なのに、私と彼、つまり社長同士で直接約束したのに、高額の支払が全くないことが続いてね。信頼関係は崩れたと思って、弁護士に任せることにしたんです」

 裁判は3月に結審し、今後は月々40万円を返済していく形で和解したという。

 ある水産会社の役員も、

「築地では、小山さんは気を付けた方がいいと以前から有名です。スポンサーを見つけては六本木ヒルズなど一等地に店を出し、潰れるとまた新たに出資者を募るという商売を続けてきた。それでも、遂に銀行の融資も受けられなくなったのか、今年1月には高利のノンバンクにも手を出したと聞きました。いよいよ首が回らなくなったのかも」

 当の小山氏はこう弁明する。

「今の状況は不甲斐なく、社員一同頑張ってやっていこうと思っています。なんとかしなきゃと、僕の給料は月10万ぐらいと社内で一番安くしています。意欲はまだ衰えていません」

 台所が火の車では、自慢の包丁も錆びつくばかり。

週刊新潮 2018年5月17日号掲載

ワイド特集「野に薫風 世に暴風」より

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