「南北融和」ムードに乗っていいのか――冷麺ブームでも日本に向けられた「ミサイル」1100基
1億年たっても…
実際に大阪のコリアタウン、鶴橋で韓国料理店「笑福」を営む朴乙純(パクオウジュン)さんに話を聞いても、
「今回、軍事境界線を越えた2人の姿を見て、本当に感動しました。南北統一はまだ難しいでしょう。でも、いままでよりも一歩、先に進んだと思います。私の国も将来は日本のように平和になってほしい」
日本国内の雰囲気としては、歴史的な一歩を踏み出したと感慨に浸る韓国の人々から、幸せのお裾分けをもらっている、そんな感じであろうか。先の外信部デスクが続ける。
「韓国にしても日本にしても、なんとなく漂う融和ムードというんでしょうか。そんな感じは大いに結構です。しかし朝鮮労働党の機関紙である労働新聞は5月6日付で、経済制裁を継続している日本を、“1億年たっても、われわれの神聖な地に足を踏み入れることはできない”と批判しています。加えて、板門店宣言でいくら完全な非核化を掲げようとも、日本には1100基以上ものミサイルが向けられたまま。この現実に目を向けなければいけないと思うんですよね」
そうした現実にも、東京の百人町近くにある韓国居酒屋で働く20代の男性スタッフはさほど興味がない。
「平壌冷麺が話題ですけど、そんなに美味しいものではありません。韓国のみんなはインスタ映えのために食べているんでしょ。冷麺ブームはすぐ終わるんじゃないかと思います」
大阪は鶴橋で焼肉店を営む47歳、豊山政江さんも、同じく冷静な意見。
「そりゃ、北も南もなかよくやってほしい。でも北はやっぱりなんか企んでるん違うか。ついこないだまで、ミサイル撃ってはりましたやん。それが急にこうしてはるからな、簡単に信じちゃっていいのって。金正恩のお父ちゃんのときも会談があったけど、結局、変わらへんかったしな」
そう、2000年と07年の南北首脳会談を経ても、なにも変わっていないのだから。
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