瀕死の妻に“綺麗だよ綺麗だよ” 「偽装保険金殺人」容疑者が演じた“悲劇の夫”

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「本当に事故だと」

 事件が起こったのは、昨年の7月18日。現場となったのは、白浜町の「臨海浦海水浴場」だ。南紀白浜といえば「白良浜(しららはま)」や「円月島(えんげつとう)」が有名。そうした観光名所が白浜の“表側”だとすると、事件の起こった海水浴場は“裏側”とでもいうべき存在だ。白良浜から車で5分ほどの距離にあるその砂浜は、衝立のように左右を岩場に挟まれ、背面はコンクリートの護岸で閉ざされている。護岸に設えられた階段を上がったところに駐車場があり、近辺には古びた食堂や公衆トイレがあるばかりである。

「去年の7月18日というのは3連休明けの平日でしたから、お客さんは少なかったですよ。しかも、午前中は天気が悪く、午後から晴れた。駐車場に車は4台か5台くらいしか停まっていませんでした」(現場近くの民宿の女将)

 その駐車場に救急車が来たのは夕方頃。そこでは、「ロス疑惑」を彷彿とさせる、次のようなシーンが繰り広げられていた。

「救急車が到着するなり、旦那さんが大声で“こっちです! こっちです! 急いで!”と救急隊員の方を現場まで案内していました」(同)

 現場近くの飲食店の従業員はこう振り返る。

「救急車が来たので何事かと思って見に行くと、岩場の陰に女性が引き揚げられ、町から委託されている監視員の方が必死に人工呼吸をしていました。ピクリとも動かないその女性の傍らで、旦那さんと思しき男性は泣きながら大声で奥さんのものと思われる名前を呼び続けていました。今思うと、全て演技だったんでしょうが、当時は本当に不慮の事故だと思いました」

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