瀕死の妻に“綺麗だよ綺麗だよ” 「偽装保険金殺人」容疑者が演じた“悲劇の夫”

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 昨年7月19日、和歌山県内の病院。前日、白浜の海水浴場で“溺れた”というその女性は意識不明のままベッドに横たわっていた。勤務先の関係者などが無言で見守る中、後に殺人容疑で逮捕されることになるその女性の夫は“綺麗だよ、綺麗だよ”と言いながら、妻の顔をさすり続けた――。

 妻を亡くした悲劇の夫から、一転、殺害の嫌疑をかけられた疑惑の主へ。同じ“構図”の事件として多くの人が思い浮かべるであろうあの「ロス疑惑」にも似たような場面があったことをご記憶だろうか。1981年にロスの駐車場で頭をライフルで撃たれて重体となった妻を日本の病院に移送する際、夫の三浦和義氏は発煙筒まで使って地上からヘリコプターを誘導。

「一美! 一美!」

 病院で三浦氏が必死に妻に呼びかけるシーンはテレビでも流されたが、その一美さんは事件から1年後に死亡。多額の保険金を受け取った夫はしかし、84年に週刊文春誌上で「疑惑の銃弾」と題する連載記事が始まると、一転して疑いの眼差しを向けられることになったのだ。

 銃撃事件の前にあった「一美さん殴打事件」で夫が警察に逮捕されたのは85年9月。88年10月には一美さん銃撃事件の殺人共謀容疑で再逮捕されたが、後の公判で、殴打事件に関しては懲役6年の有罪判決が下されたものの、殺人共謀容疑に関しては証拠不十分で無罪に。そして、事件から実に27年が経過した2008年、共謀罪容疑でアメリカの捜査当局に逮捕された夫は、ロサンゼルス市警の留置施設で首を吊って自殺した。何とも劇的な経過を辿った事件だったわけだが、和歌山県白浜町の海水浴場が現場となった今回の事件は、今後どのような展開を見せるのだろうか。

 4月19日、和歌山県警捜査1課に逮捕されたのは、大阪府に住む野田孝史容疑者(29)。シュノーケリング中の水難事故を装って妻の志帆さん(当時28)を殺害したという殺人容疑である。

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