米と鎬を削った「撃墜事件」ソ連崩壊の予兆に――NAKASONEファイル

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機密指定解除「NAKASONE」ファイル(2)

 機密指定解除となった公文書から迫る「ロン・ヤス」関係の真実。1983年に起きた大韓航空機撃墜事件で、日米は見事な連係プレーによってソ連に民間機撃墜の事実を認めさせた。自国の情報活動を犠牲にして傍受テープの提供を決めた中曽根康弘総理に対し、ロナルド・レーガン大統領は感謝の意を表明していた。

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 事件直後からソ連軍首脳は近くを米軍の電子偵察機RC-135が飛行していたと主張したが、今度は偵察衛星との関係を取り上げ始めた。大韓航空機はアラスカのアンカレッジを40分遅れて離陸したが、それは米偵察衛星フェレットDがサハリン上空を通過する時間に合わせるためだったという。また事件当時、千島上空にRC-135が、オホーツク海と日本海には対潜哨戒機P3Cが飛行して大規模な情報収集を行ったとし、これは長文の論文として9月20日付のソ連共産党機関紙プラウダに掲載された。

 だが米情報機関もただ指をくわえて見ていた訳ではない。このままではせっかく日本が提供してくれたテープの効果が半減してしまう。このためCIAはプラウダに論文が載ったのと同日、それに反論する報告書を作成している。「トップ・シークレット(極秘)」のスタンプが押された2枚の文書は、ソ連の言い分を“事実と虚構、半端な真実の寄せ集め”と片付けて真っ向から否定した。

 例えばP3Cが飛行していたのは事実だが現場から2000海里も離れており、またRC-135が活動したのは撃墜後6時間経ってからだったという。普通、米軍の偵察活動は極秘とされ、CIAがこうした報告を出すのは極めて異例で、そのせいか執筆者の名前も含めて文面の一部が黒塗りにされている。

 そして米ソが最も鎬(しのぎ)を削ったのはサハリン沖の海底に沈んだ大韓航空機の機体、特にブラックボックスの発見だった。ブラックボックスとは頑丈な金属製の容器に入れられた飛行記録計とボイスレコーダーで、高度や速度、方位などの飛行データを磁気テープに記録し、操縦室内の会話を録音する。それを回収して解析すれば撃墜時の様子や正規の飛行ルートを逸れた理由が分かるはずだった。

 9月下旬、ホワイトハウスのシチュエーション・ルーム(危機管理室)に出された機密報告を読むと、米軍が現場に派遣した艦船の位置、ブラックボックスが発する信号音探知の様子が詳細に分かる。その周囲ではソ連側も必死に機体を探しており、サハリン沖はまさに一触即発の緊張が漂っていた。

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