テレ東「二軒目どうする?」出演 加藤ジャンプが推薦する「コの字酒場」3店
濃厚な味わいのハチノスやシロ
さて「美味ぇ津」だが、ここはまずお通しに腰を抜かす。3品の盛り合わせで、必ず卵焼きがついてくる。この卵焼きが簡単な風邪なら一口で治りそうなほど滋養を感じさせる。優しい味、とよく言うが、この卵焼きは優しいだけではない。鼓舞するようなたくましさがある。出汁は煮込みの牛のブイヨンらしいのだが、これがもたらすコクが卵焼きを別の次元へと引き上げているのである。
さらに、この卵焼きの出汁の素になっている煮込みの旨さは、これをおいしいと思わない者は馬鹿だと言っていいほどに、一口目から食べる者を羽交い締めにするような強靭な旨さに満ちている。ハチノスやシロなど部位ごとに串にさし、まるでシチューのような、それでいて決して西洋風というのではない、濃厚な味わいに煮込まれている。ここ10 年でこの世に現れた煮込みのなかで最も良い煮込みだと思う。そしてどんな酒が相手でも、おおらかに協力しあって旨くなる。
「美味ぇ津」は大変な繁盛店である。忙しく動き回る店主と女将を眺めつつ、たまたま隣席になった人とあっさり会話する。向いの席の人と目があって、無言で乾杯する。どんどん酒がすすむ。これ以上の愉快な時間はない。それもこれもコの字酒場だからこそ、起こるのである。
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