テレ東「二軒目どうする?」出演 加藤ジャンプが推薦する「コの字酒場」3店
コの字型が生む場の力
創業10年にも満たない、まったくの新規のコの字酒場もある。
新橋のマッカーサー通り沿いの雑居ビル。歯医者とか司法書士事務所とか、そういう個人の事務所がおさまっていそうなビルである。どこから見てもこの中に酒場なんてないように見えるが、共用玄関を入るといきなり暖簾が目に飛び込んでくる。暖簾には「美味ぇ津」と染め抜かれている。一読して読み方はわからない。「うめず」と読ませる。店主の姓、梅津を洒落た書き方にしたのである。
狭い店内一杯にコの字型カウンターがおさまっている。この狭さなら、L字や一文字のほうが効率は良かったかもしれないが、主人が絶対にコの字でなければだめだと頑張って、この形になった。
その話を聞いて、コの字酒場探検家を名乗る身としては、心底嬉しかった。それだけコの字酒場への愛情深い店主夫妻だから、その雰囲気は新しい店とは思えぬほどに活気とコの字酒場らしさにあふれている。
コの字酒場らしさ、とは何ぞやと言われれば、それはコの字型という形だからこそ生まれる「場」の力である。カウンターの内の店主、店員と周りを囲む客。直接言葉を交わさずとも、互いに良き酔い心地を得ようと過ごす。また、互いの顔が見えて、話もしやすいから、時に、驚くべき一体感を生むことなどもある。他人の顔がほどよく見えるから、ほどよく孤独を味わうこともできる。
そういうことが成立しているのがコの字酒場である。今どきの政治に足りないもの、たとえば「人の話を聞く」「ちゃんと答える」「ごまかさない」といったことがすべて揃っている。
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