テレ朝ドラマの新メンバーを斬る!!(TVふうーん録)

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 もし自分が役者だったら、どのテレビ局のドラマにレギュラーで出たいか、妄想してみる。断トツ出たいのがテレ朝の刑事モノだ。一話完結で後腐れなく、たいして面白くなくても長期シリーズ化する確率が高い。私だったらここ押さえておきたいと思っちゃうな。継続は力なり。もちろん刑事じゃなくて、刑事が通う食堂のおばさんとか、経理課のこうるさいおばさんとか。

 ただし、ドーランめっちゃ塗られるんだろうな。テレ朝はドラマに限らず、全体的にドーランが濃い。年輩の出演者が多いせいかしら。きれいな若手俳優までが塗りたくられているのを見ると、もったいないと思う。特に、主演クラスが壮年で肌質が粗い俳優だと、見事に塗られる。茶色に。

 現段階で各局のドラマがまだ出揃わず、仕方なくテレ朝の定番シリーズ系を俎上に載せる。嫌いじゃないよ、元9係の「特捜9」も「警視庁・捜査一課長」も。ただ両作品、すでに何度も書いたんだよな、ふうーん録で。ということで新規メンバーについて書こうと思う。

 まず「特捜9」。渡瀬恒彦が演じていた係長は、まだ生きているというテイで物語を紡ぐ姿勢。そこは拍手。一瞬、渡瀬の代わりに竹中直人が加わるのかと不安だったが、杞憂(きゆう)に終わる。

 寺尾聰か。いいね。体温低め、ベタつきなし、さらっと溶け込み、表情だけで爪跡残す。いるのかいないのか心配するくらいの控えめな出番で、ちょうどいい。

 反対に、熱風を吹き込みそうなのが新米・山田裕貴。例によってドーラン塗りたくられちゃってるが、たぶん今後、特捜9の一員として可愛がられることだろう。元9係の面々はコメディ筋肉もアドリブセンスも盤石だ。鍛えられるに違いない。

「警視庁・捜査一課長」は、事件といい捜査手法といい、イマドキ感も目新しさも一切ないのだが、人気シリーズに昇格。大福を毎回食べさせられていた斉藤由貴は、不倫相手の男がパンツ被っちゃったせいで降板なのか自粛なのか。残念ではある。

 その後釜に登場したのが安達祐実だ。セーラー服を着ても違和感がまったくない36歳。驚異のベビーフェイスは刑事ドラマにおいてはかなり不利だが、どんな駄作に出ても、彼女の演技力だけは絶品だ。今回は鋭い観察眼の持ち主で、上司である金田明夫を論破して見下すドS役。悪くない。

 さらに、捜査一課長の運転手を務めるのが、ナイツの塙宣之。前作で運転手役だった田中圭が可愛くてスマートで女性たちを虜(とりこ)にしただけに、後釜は相当な重圧だろう。案の定、塙は顔がベテランなのに見事な棒読み。謙虚で礼儀正しい棒なので、逆に新種の芸達者かと錯覚してしまうほど。

 そうそう、笑いも取れるクールビューティ・陽月華も、今期からドM管理官役で新加入。なんか可愛いぞ。

 テレ朝のシリーズ系の新陳代謝はそれなりに愛でる。でも心に残る名作というよりは、来週にはケロッと忘れちゃう。その存在の軽さと中身の安易さの割に、高い視聴率をとれるから、他局はイラつくよね。悔しいよね。やりきれないよね。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2018年4月26日号掲載

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